実は、生徒一人一人にしっかり向き合い、人間力を育てる指導をしている小規模塾は、総合型選抜には向いていると思います。
当塾では、高校1年の2月から1年間かけて総合型選抜対策を行っています。志望理由書や小論文のテクニックに入る前に、「何のために学ぶのか」「自分の強みは何か」を徹底的に掘り起こします。調べ学習も机上にとどめず、現地に足を運び、人に会い、一次情報を得る体験へと広げることに力を入れています。
総合型選抜は、青田買いのようなものと、本当に力がないと通用しないものに二極化していくでしょう。だからこそ塾では、大学ごとの選抜趣旨(アドミッションポリシー)を熟知し、生徒の特性を見極めて、適切なマッチングを行うことが大事になってきます。
昨年は、日本舞踊を続けてきた男子生徒が、その経験を掘り下げる中で日本文化への関心に気づき、伝統的な東洋文化の研究に強い大東文化大学に総合型選抜で見事合格しました。単なる「一芸」ではなく、「なぜそれを続けてきたのか」「社会とどうつながるのか」を言語化できたことが鍵だったと考えています。
総合型選抜は、成績だけでなく、自己理解や対話力が問われます。そこを、高校1年からしっかり育てるのが特徴です。
当塾では、教室指導に加え、オンラインでの授業、年1~2回の合宿も行うなど、丁寧な指導を心がけています。また、勉強以外に「人間力」を高めることを目的にした講師による講話「ナカジュクTED(N―TED)」を開催している他、総合型選抜の授業でもプレゼンタイムを取り入れ、学ぶ目的や自分の強み、調べたことなどを生徒に発表させる機会も作っています。これを続けると1年で皆大きく成長していきます。
地域の学習塾が、大手予備校のように共通テストで結果を出すというのはマンパワー的にも難しいと思います。内申点を取れるように高校1年からしっかり指導をして、総合型選抜で合格をとらせるという指導であれば、地域の学習塾も力が発揮できると思います。
生徒にとっても、小規模な学習塾に慣れていた子が、いきなり予備校で、何十人、何百人と肩を並べて学ぶのは、厳しいのではないでしょうか。
中学から学習塾に通っていて高校に入ってからも当塾に通い続けるのは、「この先生にまた習いたい」「共に受験を戦ってきた仲間とまた通いたい」という子が多いです。特に、塾に来てから成績が伸び高校受験で合格できた子は、継続したいと思う傾向が強いようです。
高校生になると、地元に戻っても同級生との接点は薄くなります。その中で塾は、学習の場であると同時に、顔なじみの生徒がいる、何でも相談できる先生がいる、「安心安全の場」にもなっています。
生成AIで調べれば答えが出せるような課題ではなく、本人が体験して得た一次情報をもとに語れる試験にしてほしいです。
例えば、実際に海に出て漁を体験した、地域の高齢者にインタビューを重ねた……など。そうした経験を評価する課題であれば、塾としても早期から体験の機会を設計しやすいでしょう。
有名コンクール入賞のような”分かりやすい実績”だけでなく、「小さくても光るもの」を評価してほしいですね。さらに言えば、1年とか1年半前から総合型選抜の課題が提示されれば、1年かけて生徒の能力を磨くことができる。総合型選抜は本来、そうした個の伸長を促す制度であるべきです。
そのとおりですね。大学の教員にも大変熱心な方がいますし、面白い試みをしている方がいますがなかなか塾まで情報が届かない。大学側が教育内容や研究活動をもっと外部に開き、対話を深められれば、より適切なマッチングが可能になると思います。
「質問力」が要となる
外部の論文指導者からも、総合型選抜で最も重要なのは「質問力」と助言を受けました。良い質問は思考を深め、自己理解を進めるからです。
コーチングの三大スキルとは「傾聴・質問・承認」だといわれています。傾聴と承認は意識すれば身につきますが、質問は最も難しい。
特に教員は、”教えたがり”が多く、当塾では、「もう一回読みなさい」「もう一回自分で考えてみなさい」を口癖にし、すぐに答えを教えないようにと教員に指導しています。生徒が自力で限界に達した時、初めてヒントを出します。転んだらすぐ起こすのではなく、自分で立ち上がる経験を積ませることが成長につながります。
小学生の保護者にも「質問力向上」に協力していただいています。授業後にはメールで学習内容を共有し、家庭でそれを理解した上でお子さんに「今日は何を学んだの?」と質問を重ねてもらうことが最高の復習になります。ただし、「質問を詰問にしない」ことを保護者の方にはお願いしています。
質問力は、面接や小論文対策だけでなく、問題解決能力そのものです。スタッフ間でもアクションラーニングを行い、「なぜそう思ったのか」「目的は何か」と問いかけ合う文化をつくっています。
当塾は、塾部門のほかにフリースクールや通信制サポート校も運営しています。さらに生徒主体で「つばさカフェ」というカフェ経営を行い、原価計算や給与配分まで任せる実践も行っています。
学校で居場所を失った子どもたちの多くは、実は「飛び抜けた」個性を持っています。学校のように、平均化を求める環境では埋もれていても、安心して素の自分を出せる場では一気に花開くこともあり、こうした、生徒の本来の力を発揮できる環境づくりに力を入れています。
関心が勉強に向かうか、アートに向かうか人それぞれですが、芸大や難関私大に進んだ例もあります。
