2025.7.22新潮社「デイリー新潮」に弊社取締役の西田が寄稿しました
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進路指導担当者のための「つぶれない大学」の見分け方 ④
【総集編】苦境に立つ大学が置かれる シビアな現実

安田 智宏
関東学院大学 就職⽀援センター事務局次⻑
やすだ・ともひろ●1995年に関東学院大学入職後、ICT部門を14年間、広報・入試部門を15年間担当し、2024年4月より現職。大学事情マニア。大学マネジメント研究会理事
津守健一
山田コンサルティンググループ株式会社 経営コンサルティング事業本部 総合コンサルティング事業部 副部長
つもり・けんいち●15年以上にわたり、多様な法人を支援する。学校法人へは、現状分析、経営課題の洗出し(学生募集動向やコスト構造の分析、学部・学科別収支の算出など)、中期事業計画策定、資金調達計画策定、経営権移譲のサポートなどのサービスを提供している

想像以上に経営悪化が進んでいる大学業界。今や、学習塾や高校の進路指導担当者にとって、大学の財務状況を把握して、「つぶれない大学」を見分けることがますます重要になっている。今回はこれまで3回にわたる連載を総括して、最低限抑えるべき事情や、必須の知識をおさらいする。


大学経営を取り巻く環境が、想像以上に悪化していることをこれまで3回にわたりお話しいただきました。

安田はい。現在、急速に財務状況が悪化している大学もたくさんあります。

このまま進めば、まず人件費や施設費、教育研究経費などが削減され、教育環境やサービスの質が低下する上、最悪の場合は大学がなくなってしまうケースもあります。進路指導に携わる方にとっても他人事ではないといえます。


よい大学の見極めとして、補助金交付の基準や、大学統合の状況など、一般的には難し過ぎてついていけない話題も多いです。今回は、総括として、学習塾や学校は何をチェックすればよいか、最低限の項目を教えてください。

安田まず、一つだけざっくりした指標を挙げるとしたら、それは定員充足率でしょう。いわゆる定員割れがどのくらい進行しているかです。

定員割れと財政悪化は「ニアリーイコール」の関係です。中には明海大学さんのように定員割れしていても資産運用などで授業料収入をカバーできるだけの十分な利益を出している大学もありますが、それは例外中の例外です。

よって、定員割れ=ほぼ財政悪化しているとみなせます。これが一番分かりやすい基準でしょう。財政が悪化すると、補助金の不交付などが重なり、二重の「負のスパイラル」が発生します。(下図)

「定員割れ」が経営悪化の始まりか


在籍学生が定員の何割になると危険といえますか。

安田助成金や修学支援金などでそれぞれ基準が違うので、正確な数値を出すことはできませんが、2年続けて8割を切っているかどうかが一つの目安といえるでしょう。(下図)

3年連続で8割を切ると、新入生に修学支援金が出なくなる(高等教育の修学支援新制度)リスクだけでなく、9割を切ると大学に交付される補助金(私立大学等経常費補助金)も段階的に減額されます。

そして、7割を切った大学はかなり危険です。授業料収入がさらに減って財務状況が悪化するのはもちろん、29年度からは新学部の設置もできなくなるので、起死回生の手も打てません。

津守今、7割を切っている大学は、M&Aを考え始める一つのターニングポイントにあるといえるでしょう。

学部新設ができなくなる29年度以降まであと数年しかありません。そうなると、譲り受け手にとっても魅力が激減します。つまり、売りたくても売れず、かと言って簡単に閉校することもできない、という身動きが取れない状況になってしまいます。

よって、ここ数年で定員の回復なり譲り受け手を見つけるなりする必要があります。


定員の8割、7割が目安というのは分かりやすいですね。もう少し詳しく知りたい場合はどうすればよいでしょうか。

安田2つあります。一つは、大学の本業である教育事業で赤字になっていないかどうかです。授業料、検定料(受験料)、補助金などで、大学の人件費や教育研究経費が賄えない状況が続くと、継続的に資産が目減りしたり、借入金等に頼ることになり、危険な状況です。

大学の「教育活動収支」と「長期借入金」をチェック

安田これを調べるには、大学が公表している決算資料から、「活動区分資金収支計算書」を見つけ、その中の「教育活動資金収支差額」の項目を確認します。これがプラスであれば、大学が本業できちんと経営できているといえます。(下図)

次に、負債総額(借金)が資産総額を超えていないかどうかが重要です。

借金は投資にも使うことがありますし、それ自体が悪いわけではありません。ただ、借金の額が多いほど、何かあったときに手を打ちにくくなります。

これからは少子化で、入学者数も年々減りますし、やはり、財政的に余裕のある大学の方が安心といえます。

なお、負債総額が資産総額を上回ると国からの補助金も停止されてしまいます。


借金の額はどのように調べればよいですか。

安田これも同じく、決算資料に記載されています。「貸借対照表」を探して、その中の「負債の部」の「長期借入金」の額を確認するとよいでしょう。

ちなみに、総資産額は「資産の部」の合計額を確認してください。

専門家はもっと細かく項目をチェックしますが、ざっくりとリスクを把握するのであればこのくらいで大丈夫でしょう。

津守今、大学は本当に危ない状況です。少子化が加速する中、大学の数が多過ぎるので間違いなく大学の大淘汰時代が訪れます。

「じゃあM&Aで大学統合したりすればいいだろう。わざわざ閉校することはない」という声も聞きますが、前々号でもお話した通りで、統合は簡単ではありません。むしろ経営が傾いている大学の多くは、譲り受けてもらうことすらできない状況といえます。

よって、ぜひ進路指導に関わる皆さまには、真剣に大学の経営リスクも踏まえた上で生徒さんの進学先の大学をご検討いただくのがよいと思います。

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