名門薬学部を筆頭に理工、国際、経営、法、経済、看護、農、現代社会の9学部17学科を有する総合大学の摂南。2023年に毎日放送や北大阪商工会議所などと連携予定の現代社会学部を新設し、今後も情報系をベースとした新たな展開を検討しているという。在学生は1万人を超えた。これら改革の勢いの源はどこからなのか。関西私学で数少ない理系に強い大学として、これからの関西私学のあり方のヒントを語ってもらった。
その本学園への社会要請とは、土木建築分野でした。大正時代末期の大阪の物流は、水運から陸運への転換期で、現場監督や図面を引ける職人が、大阪府庁内部で必要とされていました。そのような人材を教育する学校が必要となり、本学園の発祥となる関西工学専修学校が創設されました。22年に創立100周年を迎えました。
そして、行政や中央官庁の関係者にも、本学園の卒業生が多く活躍しています。
また、22年の国際学部改組の理由は、その話とつながります。要するに、単なる語学教育にとどまらず、国際的な課題を見つけ挑戦し、国際社会に貢献できる「人材を育てる」ための措置でした。
ベンチマークは 「近畿大学」
情報系学部の新設も視野に
しかし、これからは、ただのコバンザメではない、従来とは違ったことで勝負しないと、発展はないと思っています。
具体的には、情報系をベースに考えていますが、建学の精神に立ち返ると、それだけではやはりしっくりこない。ですから、「情報」×「◯◯」といった、何かを掛け合わせて幅広い職業人を育成できる学部を思案中です。今必要なのは、「情報を学ぶ人」ではなくて「情報を使いこなせる人」ですから。
モットーは「学生の成長第一主義」
よって、私としては、ますます「偏差値とは何か」と考えるわけです。塾や予備校さんは、まさに偏差値で大学選びをサポートされるでしょう。
ただ、思考力が高い学生は、入学後に大きく伸びる可能性があることを知って欲しいです。本学はやはり大学で頑張りたい学生に来て欲しい。単に偏差値だけで大学を輪切りにされてしまうことに、葛藤があります。だから、一般選抜試験以外にも力を入れていきます。
それは、理系・医療系・文系学部のいずれにおいても「何のために大学で学ぶのか」「何を大学で学ぶのか」「卒業時にどんな力をつけているのか」を問い続けながら、学生の成長のための学びの場を創出していくことです。学長となった今も、日々学生の成長を追求しながら大学改革を推し進め、大学の価値を高め続けています。その成果の一つとして、実就職率が関西の私立総合大学で上位を保っています(22年度は1位)。
そして、私の教育キーワードは「混ぜる」なんです。よって、いろんな分野の学生が一緒のテーブルでアクティブラーニングをする形式を基本として、これまでにもさまざまなプログラムを考え、実践してきました。そこで常にどんな化学反応が起きているのかをチェックしています。
特に意識しているのは「人間力」や「主体性」の醸成です。「教えない教育」ともいっていますが、そのために「学びたい」「やってみたい」と思ってもらえるような多様な学びの環境を用意しています。
近年の入学者の追跡調査では、探究学習を実践したAO入試などで入学した学生の伸び率が高い結果が出ています。こういった背景から、AO入試などの総合型選抜の定員を増やすことを視野に入れて学生募集環境を整えていきます。
ぜひとも、高校現場や塾現場でもっと「探究学習」に力を入れていただきたいですね。(談)
(2023年5月取材/文責 西田 浩史)