2024.6.26東洋経済新報社主催のイベント『10年後の勝ち組はここだ 「本当に強い大学」の選び方』に弊社取締役の西田が登壇しました。
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どうなる関西学院大学 新キャンパス・学部構想、理系学部
宇宙・建築学など理系分野で「本学らしい」展開をしたい

森康俊
    関西学院大学 学長
    もり・やすとし/18代学長。1993年大阪市立大学法学部卒業。96年東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。99年東京大学助手に。その後大妻女子大学専任講師を経て2007年関西学院大学社会学部社会学科専任講師。准教授、教授、副学部長、先端社会研究所所長、社会学部長・社会学研究科委員長を経て23年より現職。大阪府出身
    関西学院大学ホームページ

    関西私立大学の雄「関西学院大学」。ヴォーリズ建築による時計台をはじめ美しいキャンパスで有名な総合大学だ。主に文系の西宮上ケ原キャンパス・西宮聖和キャンパス、25年に寮など複合施設の新設や、理系への注力で話題になっている神戸三田キャンパスなど6つのキャンパスからなる。さらに、創立の地である神戸市・王子公園にキャンパスを構想・検討中である

    「西の慶應」といわれる貴学は、経済学部、商学部を中心に就職、同窓会組織が強く、小学校から大学までの一貫教育と結束力は全国屈指です。なお、慶應義塾大は、学校全体の結束力の核が「幼稚舎」とされますが、貴学はいかがでしょうか。

    学長本学の核は、中学部ではないでしょうか。本学の同僚や同窓生の話を聞いてもそう感じられます。もちろん、大学からの入学者が一番人数が多いので、規模はもちろん大学ですが「関学スピリット」の中心は中学部からの同窓生だと思います。

    学長は、今年4月の記者会見で、私立大学として理系分野の新たな取り組みにもチャレンジしていきたいとお話しされています。この点について、国公立大学の理系学部との違いを含めて教えてください。

    学長本学の理系学部は2021年に学部改組を行いました。現在、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の4学部からなります。

    とりわけ建築学という学問は、文化的要素が強いので、本学の強みを活かした、いわゆる「関西学院らしい」展開をしたいと思っています。

    そもそも本学はヴォーリズ建築の校舎が原点というところもあって、実は、建築学部の構想は長らくあたためてきたものでした。

    いずれ、「建築学なら関学」という流れをつくっていけると期待しています。

    キャンパスの滞在時間が長い理系学生のために新しく寮とインキュベーション機能を備えた複合施設を、25年4月に神戸三田キャンパスの隣接地に新設します。(下図参照)

    一般的に理系学部のキャンパスは暗くて無機質なイメージです。貴学は海外大学のような明るい雰囲気ですね。

    学長西宮上ケ原キャンパスと神戸三田キャンパスは、どちらも「プチ・スタンフォード大学」のようだと他大学関係者からいわれます。

    また、神戸三田キャンパスへの通学には二連バス(連節バス)があります。こちらもカリフォルニア大学バークレー校のような海外の理系大学に近い雰囲気です。また、大阪梅田、新大阪、三宮の3駅から直通バスがあり、乗り換え不要で在学生からも好評です。

    学問分野では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とともに、はやぶさ2の実物大模型の展示といったイベントを行うなど、「宇宙学」にも力をいれています(下図参照)。さらに、宇宙や物理の分野、工学部のパワー半導体材料SiCウエハーなど特色あふれる研究室が多くあります。

    その上で、アットホームな研究室などの良さを積極的に示し、「リケジョ」(理系女子)にも、学びやすい環境を提供したいと思っています。

    現在、他大学でも新校舎を建てるなどキャンパスアメニティを充実させる動きが活発です。

    よって、近年の大学のキャンパスは、働きやすい環境を備えたオフィスに近づいているといえます。そのようなところで学ぶと、卒業後、社会に出ても違和感がなく過ごすことができる良さがあるでしょう。

    新キャンパスと学部は
    日本唯一のものを構想

    神戸市の一等地、貴学の創立の地でもある「王子公園」エリアの新キャンパス構想について伺います。塾関係者の間では、どのような学部ができるのか関心が非常に高く、注目されています。

    学長現在、これらは構想段階であり、具体的なことはまだ検討中です。創設の地である王子公園エリアは「原田の森」ともいわれており、キャンパス構想にあたっては、周りの環境や雰囲気に合う建物の配置やつくりにしたいと個人的には考えています。

    今後、あらゆる方との議論を重ね、さらに具体化していきます。

    新学部は今後検討を進めることになりますが、社会課題の解決に焦点を据えた「学際的な学び」を重視した、これまでの日本には無い新しい教育組織を作りたいと考えています。また、国際都市神戸にふさわしい、世界から学生が集まるキャンパスを構想しています。

    もちろん、新キャンパスができても、西宮上ケ原キャンパスが本部機能を担うのは変わりません。

    新キャンパス完成をきっかけに、各キャンパスが相乗的に本学全体の社会的評価を底上げしていくような体制にしたいと思っています。

    本学がプロデュースするこれまでと違うタイプのキャンパスにご期待ください。

    文学部こそ
    学問の王道

    伝統学部の今後の動きについても伺います。まず、関西私立大学では数少ない文学部は心理、言語、美学芸術学が強いことで有名です。さらに、副専攻制で、学問を体系的に学べることも塾関係者から高評価です。

    学長文学部は「学問の王道」だと私は思っています。特に、本学の文学部は、カバーする学問領域が広く、大きな軸といえます。

    貴学は心理学でも名門ですね。

    学長本学の心理学科には長い伝統があります。19年に西宮北口キャンパスに心理科学実践センターを開設しました。

    実験系に伝統がありますが、現在では臨床系も強くなっています。

    なお、個人的には日本で今まで情報科学と心理学、脳科学を融合した認知科学部ができなかったのが非常に不思議ですが、そうした領域をカバーしていける可能性がありますね。

    認知科学部ですか。

    学長今はデータサイエンスが提唱されています。文部科学省がデジタル人材育成のために全国118校の支援を打ち出しましたが、採択された学部の多くがその関連です。

    ですが、私は「データサイエンス」というもののさらに先があるのではないかと思っています。そういう意味でも、データサイエンスと認知科学は重要な領域だと思うのです。

    貴学の看板学部の商、経済学部の今後はどうなりますか。

    学長早稲田大学政治経済学部は、入試で数学を必須化して真の看板学部としての地位を復活させました。ただし、私立大学における文系志望の受験生の多くは、数学で受験するのはハードルが高いともいえます。

    本学の商、経済学部もそれを踏まえた上で、数学をどうするのかは引き続き検討するテーマととらえています。

    最後に、塾や予備校の先生方にメッセージをお願いします。

    学長私は日本の教育の中で、塾や受験産業が担う役割はとても大きいと思っています。

    現在、本学入学センターを中心に、塾や予備校の方々から本学へのご意見を聞いています。その上で、今後も塾や予備校の皆さまとの関係性を強めて、引き続き力を入れていきます。

    そして、次は「直接の接点」を考えています。場合によっては、学長、副学長などが皆さまのところに伺って、本学への「生の声」を聞かせていただける関係性を築き上げていきたいと思っています。

    (2023年7月取材/文責 西田 浩史)

    ルートマップマガジン社 取締役/雑誌編集局 ルートマップマガジン編集部 編集長
    追手門学院大学客員教授、教育ジャーナリスト、『大学ジャーナル』編集部 編集委員、アロー教育総合研究所 客員研究員。2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、他学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。『現代ビジネス』『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『週刊ダイヤモンド』『ダイヤモンド・オンライン』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国4,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2022年11月現在)。
    著者に『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。放送大学大学院文化科学研究科修士課程在籍中

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