塾注目の「プログラミング講座」(塾向け)を2023年秋から開講したベネッセコーポレーション。「進研ゼミ(家庭学習用教材)としては開講3年で5万人超の受講実績を誇る。その学習意義から講座内容まで幅広く伺った。
2023年1月から24年5月に弊誌が全国122塾に聞き取り調査したところ、82%がプログラミングに興味があると回答し、そのうち70%は英語や数学のように塾のカリキュラムの柱にしたいとしています。
安藤まず重要なのは、プログラミングには、入試科目の「情報I」としての側面と、どんな仕事にも必要とされる「プログラミング的思考力」の育成という2つの側面があることです。
ぜひ、こうした視点を学習塾の方々には持っていただきたいです。
大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に「情報I」が新規導入され、その基礎を学習するための「プログラミング」の導入に塾も本気になってきました。
安藤事実、現代社会で活躍する能力を養うために、プログラミングを含めた情報科目を学ぶことが必要な時代になっています。よって、大学入試に導入された意義は計り知れません。
ただし、現在の学習指導要領では、小学校には情報という教科がなく、中学校では技術科の中に情報が入っています。今後は、小学校から高校まで通した体系的な教育が望まれます。
特に貴社が2021年春に「プログラミング講座」をスタートしてから、塾関係者からの注目度も高まっています。
村越ありがとうございます
多くのプログラミングの講座は、大学入試に直結しにくい内容で「お習い事」止まりだと、塾関係者から不満が多いのも事実です。貴社の講座の内容を見ると、共通テスト「情報Ⅰ」や推薦入試(総合型・学校推薦型選抜)に直結していますね。
村越共通テスト「情報I」に必要な4領域(情報社会、情報デザイン、プログラミング、データ活用)をカバーしています。
開発では、小学校のうちから学んでおくべきことを中学、高校で学ぶ内容から逆算し、試行錯誤をいくつも重ねました。
世の中にある多くの「プログラミング講座」は、この4領域のうち「プログラミング」の1領域しか扱わないところが多いです。
村越例として挙げますと、円グラフや割合はもちろん、ユニバーサルデザインやピクトグラム、さらに統計学でいう相関など、小学生では難しいと思われそうなことも、楽しく学んでもらえるカリキュラムを工夫しました。
研究者からのお立場から見て内容はどうですか。
安藤子どもが学習する講座ではあるものの、身近な題材を使って問題解決や探究のプロセス、ペルソナなどのマーケティングの概念など、小学生にも身近な事例でストーリーが展開し、わかりやすく学べます。大人でも気づきが得られる内容だと思います。
塾業界では「情報I」を指導できる講師が不足しています。
村越弊社のサービスの場合、導入塾様での指導のための専門知識、新たな講師採用は不要です。なぜなら、家庭で自学自習可能な進研ゼミ教材を塾向けに切り出してご提供しているからです。加えて、初期費用、契約期間、最低料金設定もしておらず、ほぼ事業リスクなくスタートいただけます。
導入する塾は、塾生のモチベーション管理をするだけでよいということですね。
村越そうです。
満足度が高い学習には
「可視化」がポイント
子どもが、細かい学びや気づきを書くノートが秀逸です。
村越ノートを使うことで、塾の先生は、子どもが学んだり考えたりしたことに対して、褒めたり、励ましたり、必要であれば漢字や語句を直したりできます。
この「成果の可視化」で、子どもはモチベーションが上がり、保護者は子どもの成長が実感できます。双方の満足度が高まるので、塾経営者にとっても継続率向上などのメリットが大きいはずです。
さらに、子どもに自ら学習してもらうためにステップを細かく設定し、「つまずきにくい」工夫もしています。これには、進研ゼミでの通信教育のノウハウが生きています。
こうした、「自分でやれた」「工夫した」と達成感を感じてもらう仕掛けをたくさん用意しています。
安藤身近な題材を使って、子どもを学習に引き込むストーリー作りが非常にうまいですね。
そもそも、プログラミングは他の学問(教科)とどう違うのでしょうか。
安藤まず、プログラミングとは論理的思考そのものです。コンピュータへの指示は一切の曖昧さ無く明確に言語化する必要があるからです。
もう一つは、デジタル化された情報を扱うことです。これは、コンピュータサイエンスや情報科学ともいわれています。要は、身の回りの現象ではなく、コンピュータの世界における人工的な情報の原理や法則を扱うことですね。これが他の科目とは性質が大きく異なる点です。
よって、プログラミングとは、コンピュータの中でできるすべてのことを扱う「センス」を養う科目でもあります。
「プログラミング」は
既存の教科と相性も良い
具体的に、プログラミングはどう役に立ちますか。
安藤自然現象を再現したり、画面上のキャラクターを動かす際に、理科や数学の考え方を自然に活用することになります。
こういった点で、既存の教科の面白さにプログラミングを通じて気づくことができ、既存教科を学ぶ意味を再確認することでしょう。
最後に塾関係者にメッセージをお願いします。
安藤「プログラミング」では、コンピュータの仕組みを理解したり、様々な情報を扱う時の頭の使い方を知ることができます。これは、日常生活やその他の教科では習得できません。
こうした「プログラミング的思考」は、仕事の効率化、業務の改善、効果的なコミュニケーションなど、社会人としても役立つ広範なスキル獲得につながるといえます。
さらに、プログラミングのスキルを直接仕事にするならば、プログラマー、システムエンジニアなど、国内企業にとどまらず、海外へも就職の幅を広げられます。
村越そのために、小学生のうちからプログラミングに親しみ、「やってみたい」と楽しんでもらうことが重要です。それを通じて社会課題に自ら向き合う姿勢が身につきます。
情報活用能力は、現代社会では、読み書き計算に並ぶ基礎力です。ぜひ、子ども達には楽しみながら学んでいただきたいですね。(談)
(2024年5月取材/文責 西田 浩史)