その法学部は移転後、近隣の後楽園キャンパスにある理工学部、市ヶ谷田町キャンパスにある国際情報学部とカリキュラム上で連携できる体制を整えています。
これは、一つの出発地点ですが、例えば、法学部の学生が理系分野を学んだり、逆に、理系の学生が法学を学べるような想定をしています。
学問や研究成果が社会に実装されるときには、法律の規制を無視できないわけです。この考え方に立つならば、本学ならではの文理横断教育の1つの姿を見出せるはずです。
法学部として表立っては議論していませんが、もちろん意識はしています。
私個人の意見ですが、なかなか思い切ったな、という印象です。法律は論理ですので、実は数学とも相性が良いのです。私自身も数学で受験して法学部に入学したので、ぜひ数学の得意な学生に来て欲しいですね。
ただ、数学を必須にするかどうかは全く別の議論になります。
今後、学部を問わず、新指導要領が始まるタイミングで受験科目のあり方も自ずと変わるでしょう。それに向けて、学長指揮のもと、各学部で検討を進めているところです。
多摩では学部再編と新学部設置も新たに検討中
しかし、仮に研究教育を進めていく上で在学生、企業、行政、地域の機関の人たちに総合的にメリットを提供できることが明らかとなれば、土地取得も含めて検討するかもしれませんね。
しかし、現在はビジネスがグローバルに展開するようになりました。よって、都心という地理的な要素は必ずしも重要ではなくなりつつあります。私自身、商学分野の研究者として都心キャンパスがそこまで効果的だとは考えていません。
ただ、現在では地理的制約にとらわれない情報伝達手段も多いので、ご心配のような影響は小さいと考えています。
よって、研究面に加えて、移転による学部生への法曹養成におけるプラス効果は絶大です。
一方、多摩キャンパスの方では、学部をどう再編していくべきかを重点に学内では検討しています。
まず、カリキュラムの再編です。多摩キャンパスの複数学部で共通している教育課程を集約したり、グローバル化はもちろん、政策、ビジネスなどの視点から整理したりすることも必要でしょう。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、何でも再編してしまおうということではありません。
多摩キャンパスは、アメリカの大規模大学のような広大な敷地を持っています。学生数、教職員数、学部学科の幅広さなどを含め、巨大なリソースがあるわけです。
それを活用し、地域の方々に学びを提供したり、社会と共創すること、さらに行政機関などと連携して学びや研究の成果を社会に実装し、還元することも我々の重要な使命だと思っています。
よって、世界各国からの留学生に向けて、多摩キャンパスの学部学科をまたがる総合的な学びを提供するということも考えられます。
他大学に比べ、本学が進んでいない分野や、今までの本学にない斬新な学部を検討しています。
そして、これまでの学問領域にとらわれることなく、柔軟な検討を行っています。
そして、目先の状況だけではなく、中長期的観点から本学が設置すべき学部学科の要素を洗い出しています。場合によっては複数の学部になるかもしれませんね。
今の中堅教職員は、これからの大学運営や教育・研究の中核を担っていく世代です。彼らを中心に時代の趨勢を踏まえ、大局的な判断を下すことになります。具体的なお話はもう少しお待ちください。
士業の実績は、卒業生なしには成しえなかった
例えば、法曹界、会計士界、あるいは議員、産業界、出版界などがあります。
また、私達にとって大切なのは、国内外にある地域支部ですね。地方出張の際はその地域支部と懇談の場を作るようにしています。本学のことを真摯に考え、組織を挙げての情報提供や提言を頂いています。大学運営に参考になることも多いので、とてもありがたいことだといつも感じています。
他にも、各支部のパイプを通じて現地の大学を訪問しています。
一方で、学生も海外インターンシップの面ではお世話になっています。現地の学員会の仲介でインターンシップ先を開拓するなど、力強い支援をいただいています。実際、私も現地に伺い、今後のことを懇談しています。
そうした先生方を中心に、自発的な勉強会が営まれ、「中央大学 経理研究所」の講座など、自然と試験への備えも積み上げられてきました。
一方、多摩キャンパスへの移転当時は、特に都心部で受験指導専門の予備校や専門学校などが台頭していました。
そこで、多摩キャンパスでも法曹人材をしっかり育成すべく、新たに法職講座などが設けられました。その指導にあたったのは、本学の卒業生であり、有資格者です。
彼らが先頭に立って、後輩の指導を行う。そうすると、その後輩もそれを見習うわけです。自分たちが勉強して合格したノウハウをさらに後輩に伝える、という循環が出来上がりました。
改めてこれまでを振り返ると、卒業生の力なくして、本学の国家試験合格実績は残せなかったといえますね。
ただ、昔から優秀な学生が皆、弁護士を目指してきたかというと、そうでもありません。
例えば、高いコストとリスクを負ってまでロースクールに行っても仕方がないと考えて、弁護士以外の進路を選択するケースももともとありました。近年はそういう学生が少し増えているとは思いますね。
2003年にロースクール制度が導入されましたが、あまりうまくいったとはいえません。そこで第二の矢として「3プラス2」制度改革を行ったり、国の法曹養成をうまく機能させようという意気込みが感じられるので、効果を見守りたいですね。
最近、AI、DXが進んでいく中で、弁護士は消えゆく職業といわれることもありますが、どんなにAI技術が進んでも、法曹の職業自体はなくならないでしょう。
本学は、多様な業界の第一線で活躍する人材を数多く送り出してきました。これに貢献しているのが、先にも話題に出た同窓会の堅牢なネットワークです。
在学中からきめ細かいサポートを受けながら、各業界のロールモデルである卒業生と交流ができ、卒業後も緊密に連携できる環境は大きな財産といえます。
また、本学の「父母懇談会」は、全国47都道府県のすべての支部で開催します。ここまでやっているのは本学だけでしょう。
そこでは、大学の近況や、キャリア関係の話のほか、父母向けに個別相談会も開いています。
塾や学校の先生方に、今後、こうした中央大学の学生に対する本学の面倒見の良さやサポート体制もお伝えしていきたいですね。
ただ、このような、データで表せられない部分をご理解いただくのはなかなか難しいことです。
ぜひキャンパスに足を運んでいただき、私どもで本学をご案内できればと考えております。 (談)
(2022年8月取材/文責 西田 浩史)