2024.6.26東洋経済新報社主催のイベント『10年後の勝ち組はここだ 「本当に強い大学」の選び方』に弊社取締役の西田が登壇しました。
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どうなる 中央大学法学部 「都心移転」
新キャンパス完成への意気込み

河合 久
    中央大学 学長
    かわい・ひさし/1958年生まれ。中央大学商学部卒業。同大学院商学研究科博士前期課程修了。いわき短期大学助教授、高千穂商科大学助教授などを経て2000年4月中央大学商学部教授。商学部長、副学長、国際経営学部教授(現)、国際経営学部長などを経て、2021年5月より現職。
    猪股 孝史
      中央大学 法学部長
      いのまた・たかし/1959年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。同大法学研究科民事法専攻修士修了、同博士課程満期退学。放送大学助教授、桐蔭横浜大学法科大学院教授、中央大学法学部教授(現)などを経て、2019年11月から現職。

      2023年、中央大学の法学部が45年ぶりに東京・茗荷谷へ移転することで教育関係者の期待が上がっています。私が『サンデー毎日』に寄稿した全国300塾関係者による「ダブル合格調査データ」では、早くも、早稲田大、慶應義塾大の法学部と人気が拮抗しつつあります。なお、上智大法学部とはすでに拮抗しています。また、明治大法学部には圧勝でした。

      学長本学は、多摩キャンパス移転から45年近く経ってますし、収容定員6000人規模の法学部の都心移転は大きなインパクトがあると実感しています。

      その法学部は移転後、近隣の後楽園キャンパスにある理工学部、市ヶ谷田町キャンパスにある国際情報学部とカリキュラム上で連携できる体制を整えています。

      それは具体的にどういったものですか。

      学長文理横断的なプログラム科目群を用意して、各学生が学部を超えて自由に履修できるような仕組みです。

      これは、一つの出発地点ですが、例えば、法学部の学生が理系分野を学んだり、逆に、理系の学生が法学を学べるような想定をしています。

      学問や研究成果が社会に実装されるときには、法律の規制を無視できないわけです。この考え方に立つならば、本学ならではの文理横断教育の1つの姿を見出せるはずです。

      早稲田大政治経済学部が入試に数学を導入して話題となりました。その改革は意識しておられますか。また、今後貴学法学部は同様な動きを計画しておられますか。

      法学部長なるほど。これは、学習塾業界の方々が気になるところかもしれませんね。

      法学部として表立っては議論していませんが、もちろん意識はしています。

      私個人の意見ですが、なかなか思い切ったな、という印象です。法律は論理ですので、実は数学とも相性が良いのです。私自身も数学で受験して法学部に入学したので、ぜひ数学の得意な学生に来て欲しいですね。

      ただ、数学を必須にするかどうかは全く別の議論になります。

      今後、学部を問わず、新指導要領が始まるタイミングで受験科目のあり方も自ずと変わるでしょう。それに向けて、学長指揮のもと、各学部で検討を進めているところです。

      多摩では学部再編と新学部設置も新たに検討中

      茗荷谷キャンパスに、もう一つの貴学の看板学部で公認会計士養成の実績の高い商学部、経済学部も将来的に移転するのではないか、という噂が多いです。

      学長これは計画に全くありません。本学は都心キャンパス戦略を取っているわけではありません。今のところ、新たな移転用地取得も検討していません。

      しかし、仮に研究教育を進めていく上で在学生、企業、行政、地域の機関の人たちに総合的にメリットを提供できることが明らかとなれば、土地取得も含めて検討するかもしれませんね。

      商学部は、ビジネスを研究する学問です。あらゆる産業が集中している都心で、研究できることはメリットにならないでしょうか。

      学長おっしゃるように、研究対象の近さ、情報の取りやすさを考えると、都心部にキャンパスを置くことはメリットといえるかもしれません。

      しかし、現在はビジネスがグローバルに展開するようになりました。よって、都心という地理的な要素は必ずしも重要ではなくなりつつあります。私自身、商学分野の研究者として都心キャンパスがそこまで効果的だとは考えていません。

      早慶と並ぶ「私学の雄」の法、そして看板学部の商、経済の学問上の「繋がり」が貴学の強さの一つだと思います。法学部だけ移転することで、これらの「繋がり」や「伝統」が途切れるのではないかと心配する関係者もいます。

      学長ご心配はごもっともです。これまで45年近くも同じ多摩キャンパスにいた環境から、法学部だけ移転するわけですから、本学としても慎重に取り組む必要があると思っています。

      ただ、現在では地理的制約にとらわれない情報伝達手段も多いので、ご心配のような影響は小さいと考えています。

      法学部長私も同感です。学部同士が物理的に近くないと連携できないのか、ということは、今一度考えていきたいですね。

      都心にある法科大学院(以下、ロースクール)はどうでしょうか。関係者からは、貴校の法学部を卒業した学生の多くが東京大、一橋大、早稲田大、慶應義塾大などのロースクールに進学するため、これらの司法試験合格実績にかなり貢献している、という話を聞きます(笑)。

      法学部長他校のロースクールに進学した学生も含めると、司法試験に合格した本学卒業生は、日本全体の合格者の1割を超えています。

      学長本学のロースクールも駿河台に移転します。先ほど、移転により学部間の横の連携が失われるのではないかという懸念がありましたが、法学部とロースクールに関しては距離が近くなることのメリットは計り知れません。

      よって、研究面に加えて、移転による学部生への法曹養成におけるプラス効果は絶大です。

      一方、多摩キャンパスの方では、学部をどう再編していくべきかを重点に学内では検討しています。

      学部再編ですか。

      学長はい。それも視野に入れていますが、様々な切り口もあるだろうと考えています。

      まず、カリキュラムの再編です。多摩キャンパスの複数学部で共通している教育課程を集約したり、グローバル化はもちろん、政策、ビジネスなどの視点から整理したりすることも必要でしょう。

      ただ、誤解しないでいただきたいのは、何でも再編してしまおうということではありません。

      多摩キャンパスは、アメリカの大規模大学のような広大な敷地を持っています。学生数、教職員数、学部学科の幅広さなどを含め、巨大なリソースがあるわけです。

      それを活用し、地域の方々に学びを提供したり、社会と共創すること、さらに行政機関などと連携して学びや研究の成果を社会に実装し、還元することも我々の重要な使命だと思っています。

      具体的にはどのような活動を想定されているのでしょうか。

      学長現在、地域にある大学コンソーシアムやネットワークを通じて活動していますが、これからはより一層深い地域交流が必要だと考えています。具体的には、地域にノウハウや人材を提供するような、ソフト面での連携です。

      よって、世界各国からの留学生に向けて、多摩キャンパスの学部学科をまたがる総合的な学びを提供するということも考えられます。

      新学部の設置も考えておられますか。

      学長それも視野に入れています。

      他大学に比べ、本学が進んでいない分野や、今までの本学にない斬新な学部を検討しています。

      そして、これまでの学問領域にとらわれることなく、柔軟な検討を行っています。

      それは、医学部以外ですよね。

      学長そうです。ただし、新学部設置の具体案はまだ出ていません。今は、中堅若手の教職員を中心にした組織で、新学部案を検討しています。

      そして、目先の状況だけではなく、中長期的観点から本学が設置すべき学部学科の要素を洗い出しています。場合によっては複数の学部になるかもしれませんね。

      今の中堅教職員は、これからの大学運営や教育・研究の中核を担っていく世代です。彼らを中心に時代の趨勢を踏まえ、大局的な判断を下すことになります。具体的なお話はもう少しお待ちください。

      士業の実績は、卒業生なしには成しえなかった

      早慶に並ぶ組織力を誇る貴学の同窓会「白門会」は多くの著名人を輩出していますね。

      学長本学の卒業生は「学員会」という組織の中でいろいろ活動されています。この中には支部があり、その一つは職域支部です。

      例えば、法曹界、会計士界、あるいは議員、産業界、出版界などがあります。

      また、私達にとって大切なのは、国内外にある地域支部ですね。地方出張の際はその地域支部と懇談の場を作るようにしています。本学のことを真摯に考え、組織を挙げての情報提供や提言を頂いています。大学運営に参考になることも多いので、とてもありがたいことだといつも感じています。

      海外支部はいかがですか。

      学長ちょうど今年の8月にアメリカ・ロサンゼルス支部が創設30周年を迎えました。理事長と共に出向いて交流をしてきました。

      他にも、各支部のパイプを通じて現地の大学を訪問しています。

      一方で、学生も海外インターンシップの面ではお世話になっています。現地の学員会の仲介でインターンシップ先を開拓するなど、力強い支援をいただいています。実際、私も現地に伺い、今後のことを懇談しています。

      強力な卒業生団体の存在は、士業の国家試験合格実績にどう影響しているのでしょうか。

      学長司法試験にしても、公認会計士試験にしても、伝統的に本学の教員が制度設計の初期段階から関わってきたわけです。いわば、職業がどうあるべきかという萌芽期から活躍したパイオニアですね。

      そうした先生方を中心に、自発的な勉強会が営まれ、「中央大学 経理研究所」の講座など、自然と試験への備えも積み上げられてきました。

      一方、多摩キャンパスへの移転当時は、特に都心部で受験指導専門の予備校や専門学校などが台頭していました。

      そこで、多摩キャンパスでも法曹人材をしっかり育成すべく、新たに法職講座などが設けられました。その指導にあたったのは、本学の卒業生であり、有資格者です。

      彼らが先頭に立って、後輩の指導を行う。そうすると、その後輩もそれを見習うわけです。自分たちが勉強して合格したノウハウをさらに後輩に伝える、という循環が出来上がりました。

      改めてこれまでを振り返ると、卒業生の力なくして、本学の国家試験合格実績は残せなかったといえますね。

      昔に比べ、弁護士、公認会計士などの士業の人気はなくなっていると一部ではいわれているようです。

      法学部長これは評価が分かれるところですね。きちんとお答えするにはまず、弁護士をはじめとする士業の魅力について丁寧に分析していく必要があります。

      ただ、昔から優秀な学生が皆、弁護士を目指してきたかというと、そうでもありません。

      例えば、高いコストとリスクを負ってまでロースクールに行っても仕方がないと考えて、弁護士以外の進路を選択するケースももともとありました。近年はそういう学生が少し増えているとは思いますね。

      2003年にロースクール制度が導入されましたが、あまりうまくいったとはいえません。そこで第二の矢として「3プラス2」制度改革を行ったり、国の法曹養成をうまく機能させようという意気込みが感じられるので、効果を見守りたいですね。

      法曹養成の雄である貴学自身は、変化を感じていますか。

      法学部長おかげさまで、本学には「法律家になるなら中央大学の法学部だ」という意識を持って全国から毎年一定数の学生に集まっていただいています。本学のコアな部分は変わりません。

      最近、AI、DXが進んでいく中で、弁護士は消えゆく職業といわれることもありますが、どんなにAI技術が進んでも、法曹の職業自体はなくならないでしょう。

      最後に、学習塾や高校の先生方へのメッセージをお願いします。

      学長入試など、大学の入口についてはもうご存知だと思います。 ですので、入学後や、卒業後の学生の活躍について話をします。

      本学は、多様な業界の第一線で活躍する人材を数多く送り出してきました。これに貢献しているのが、先にも話題に出た同窓会の堅牢なネットワークです。

      在学中からきめ細かいサポートを受けながら、各業界のロールモデルである卒業生と交流ができ、卒業後も緊密に連携できる環境は大きな財産といえます。

      また、本学の「父母懇談会」は、全国47都道府県のすべての支部で開催します。ここまでやっているのは本学だけでしょう。

      そこでは、大学の近況や、キャリア関係の話のほか、父母向けに個別相談会も開いています。

      塾や学校の先生方に、今後、こうした中央大学の学生に対する本学の面倒見の良さやサポート体制もお伝えしていきたいですね。

      ただ、このような、データで表せられない部分をご理解いただくのはなかなか難しいことです。

      ぜひキャンパスに足を運んでいただき、私どもで本学をご案内できればと考えております。  (談)

      (2022年8月取材/文責 西田 浩史)

      ルートマップマガジン社 取締役/雑誌編集局 ルートマップマガジン編集部 編集長
      追手門学院大学客員教授、教育ジャーナリスト、『大学ジャーナル』編集部 編集委員、アロー教育総合研究所 客員研究員。2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、他学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。『現代ビジネス』『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『週刊ダイヤモンド』『ダイヤモンド・オンライン』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国4,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2022年11月現在)。
      著者に『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。放送大学大学院文化科学研究科修士課程在籍中

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