産業能率大学の総合型選抜が注目されている。2024年には、同大の総合型選抜が先進事例として、文部科学省の調査報告書にも掲載された。
産能大の総合型選抜の何がユニークなのか。筆者が特に注目しているのは、それが慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の入試を踏襲したものであり、SFC志望者にとって、ちょうどよい練習台になるのではないかという点だ。その仮説のもと、産能大の入試企画部長の林巧樹氏、企画課長の渡邊道子氏、企画課の森谷博貴氏に話を伺った。
総合型選抜はSFCから始まった
そもそも総合型選抜とは何か。読者の方々には釈迦に説法と思うが、一度整理しておきたい。
総合型選抜(旧AO入試)が生まれた背景には、従来の「偏差値至上主義」への反省と、求められる人材像の変化があった。1980年代まではペーパーテスト中心の一般入試が主流だったが、これでは創造力やリーダーシップ、問題解決力といった数値化しづらい力は測れない。
そこで動いたのが慶應義塾大学である。90年、SFC新設にあたり、「明確な目的意識を持ち、大学の教育方針に共鳴する学生を迎えたい」との狙いで、米国のAO制度をモデルにした日本初のAO入試を導入した。
林氏は当時を振り返る。
「SFCのAO入試の『未来からの留学生が学ぶキャンパス』という理念に衝撃を受けました。大学で学び自ら未来を作る学生を求めているというメッセージです。志望理由書や面接を通じて対話を重ね、可能性を確認していく。これこそ私たちが求めている入試のあり方だと思いました」
SFCの総合型選抜は、膨大な志望理由書や30分面接で知られるが、産能大の総合型選抜も、「自己記述書」で経験や意欲を深く掘り下げ、面接の重要度が高い点で共通している。
だからこそ筆者は「SFC受験生にとって産能大は練習台になる」と考えたのだが、取材を進めるうち、それ以上の価値があると感じるに至った。
未来の成長を見据えた育成型のプログラム
産能大合格者の「自己記述書」や「課題解決プラン」(総合型選抜キャリア教育接続方式のプレゼン課題)を見て、筆者は精度の高さに驚いた。その背景には同大学の「育成型」プロセスがある。
林氏は言う。
「本学の総合型選抜は、過去の実績ではなく、入学後に伸びる人を入試段階から育てることを重視しています。未来から逆算して選抜する。育成過程で接点を多く持つことで、入学後のミスマッチも起こりにくくなります」
例えば、入試前の「アクティブラーニング体験DAY」では、高校生が教員や在学生とともに課題解決に取り組む。単なる説明会ではなく、スキル育成の場だ。
オープンキャンパス時の模擬面接や個別相談も同様である。
渡邊氏は続ける。
「模擬面接ではエントリーシートの書き方を助言します。対話を重ね、生徒一人ひとりの強みを引き出し、目標を整理していく。面接官というより伴走者として育成していくのが特徴です」
ポイントは、「本人が腹落ちするまで」何度でも壁打ち相手となり、ブラッシュアップを繰り返していることだろう。同大受験者がいる高校や予備校には、放課後に足を運び、「なぜそう考えたの?」「どうやったらそれが実現すると思う?」と問いを重ね、生徒の志望動機や将来目標を練り上げるという「塾顔負けの伴走体制」を用意している。
これにより、「最初は『カレー屋をやりたい』程度の動機だった生徒が、対話を重ねるうちに『経営戦略としての差別化』を語り出すようになります」と森谷氏は語る。
大学での学びの方向性が明確になるだけでなく、社会で必要なスキルも自然と磨かれていく。
練習台以外でも様々な面でお得感
産能大はSFC志望者の練習台になり得ると述べたが、同大の入試前プログラムで自己分析やプレゼン力を高めれば、実はどの大学受験にも有利に働く。
近年は、一般選抜で難関大に合格しながら、「本当に合うか」を確かめるため育成型総合型選抜に挑む例も出ている。
筆者の塾関係者への取材では「あえて産能大を選ぶ」受験生が増えている。大学名より「何を学ぶか」を重視する動きの表れだろう。
産能大の総合型選抜は4方式あるが、25年度の合格倍率はいずれも1.3~2.0倍程度と落ち着いている。
合格保持のまま他大学に挑戦できる併願方式、ZOOMを活用した個別相談、LINEチャットでの個別対応など、受験生にとって安心材料も多い。無料エントリーには、本入試での面接免除制度もあるため、ぜひ問い合わせてほしい。
同大学では塾・学校向け説明会への出張対応も行っている。
