東京女子医科大学(以下、女子医)というと、前理事長の不祥事や医療過誤のネガティブなイメージを持つ人が多いでしょう。
実は、同大は世界で唯一の女子のみの医科大学で、卒業生の結束力も非常に強いのが特徴です。
医療分野でも、脳卒中や、糖尿病、代謝内科領域において日本トップクラスです。大学病院ではそれら国内最高レベルの医療サービスを提供しているのはもちろん、医学会でも大きな影響力を持っています。
そんな女子医ですが、相次ぐ不祥事にもかかわらず、受験業界では人気を堅持しています。
まず、なんといっても特徴的なのは、一般推薦入試で選抜する33名の他、卒業生子女推薦入試(旧・至誠と愛入試、2026年度入試より廃止)で、10名を選抜していることです。
これは、卒業生の子女など(3親等以内の親族に卒業生がいる者)を対象にした入試です。
女子医OGが直談判に来る
18年にこの入試が始まった際、メルリックス学院には、この入試に特化した対策講座を行ってほしいという要望が相次ぎました。
その結果、東京・大阪・名古屋の3校舎全てで開講することになります。これは、全国に強い同窓生が分散していると思い知らされる出来事でした。
そして、開講するや否や、「祖母、母が代々女子医のOG」というご家庭で、国公立大学医学部も狙えるハイレベルな受験生も相当数が集まりました。
なぜここまで強いOGが全国にいるのでしょうか。
まず、前述の通り、世界で唯一の女子医の強みを生かせていることです。日本では、他にも関西医科大学、東邦大学が女子医学専門学校として誕生しましたが、2大学ともすでに共学化しました。女子だけで学ぶことによる団結力は、この先も続くものになることでしょう。
そして、大学独自の教育システムです。同大は、全国に先駆けて「テュートリアル教育」を1990年に導入し、注目されました。
これは学生自身が問題発見と解決を行う新しい教育法で、少人数グループで事例を討論し、その後に学んだことを教え合うものです。
なんと、全授業の4分の1がこの形式です。授業をしながら学生同士の結束力を強める仕組みと言えるでしょう。
各グループには、必ず教員が1名付き、サポートも行いますので、落第者(中退者)もほとんど出ないようになっています。
もう一つは、TBL(チームベーストラーニング)です。これも、学生が個人とチームで問題解決から目標達成まで行うものです。
この特色は、チームごとに結果が異なった場合、その理由をクラス全体で考えることです。積極的な討論を通じて、相互の学びが促進され、さらに団結力が強まります。
女子医では、これらにより、きめ細かい指導が実現しています。
同大の「最低修業年限での6年次進級率の高さ」「卒業試験の合格率」もライバル校より高い水準で推移しています。
一方、医師国家試験の合格率は高くはありません。
ですが、それは他大学のように進級や卒業試験を意図的に操作して、国家試験に合格しなさそうな学生を排除していないからです。
きめ細かい教育制度によって、この先、国家試験合格率も改善していく可能性があるかもしれません。
いずれにしても、これら特徴的な教育制度と、女子大ならではの結束力によって、今後も同大は底力のある大学であり続けるでしょう。