2024.6.26東洋経済新報社主催のイベント『10年後の勝ち組はここだ 「本当に強い大学」の選び方』に弊社取締役の西田が登壇しました。
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創刊号特集1
教育業界の進路指導

子どもの進路とは親にとって、もっとも頭を悩ませる問題の一つだろう。全国300塾・教育関係者への取材によれば、最近は、小学生の段階で志望大学まで決めるなど、早期からロードマップを描いている家庭も少なくないようだ。なお、首都圏では、名門早慶小学校に人気が匹敵する新設校や、トップ海外大学進学を視野にいれた私立中高一貫校など、新たにさまざまな人気校が出てきている。今回、それら幼稚園から大学までの学校の選び方のポイントや資格など、最新の教育事情をまとめた。

子どものいる家庭にとって、学校選びはもっとも頭を悩ませる問題の一つ。子どもの個性、通いやすさ、学校が標榜するアカデミックポリシー、長期的な目で見たランニングコスト――。考え方や基準が各家庭においてさまざまで、調べれば調べるほどどの学校も魅力的かつ、どこかしら欠点が見えてくるものだ。だからこそ、学校選びは決して簡単ではない。

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今回は、幼稚園から大学まで学校選びについてのポイントを、順を追ってお話したい。目の前の「受験」にだけ集中していると、見えなくなりがちなロードマップを見据え、学校選びの一つの指標としていただきたい。

まず、幼稚園から小学校までの学校選びには大きく二つの選択肢がある。一つは古くからブランドの礎を築いてきた「伝統校」、もう一つは先進的な取り組みが魅力の「新設校」だ。

「伝統校」とは、長い時間をかけて培ってきた独自の教育方法・文化を有し、ブランドとして確立している学校を指す。伝統という名の安心感があり、親も学校の先生も教育に熱心に関与することが多いのが特徴だ。どちらかといえば育まれてきた伝統を重んじる「人間教育」に特化することが多く、中学・高校以降の受験を意識した教育寄りではないといえる。

「新設校」はその点において伝統校とは真逆で、中学受験以降の受験戦争を見据えた教育が特徴だ。共働き家庭が多いことから、親の手間がかからない学校生活が送れるというメリットがある。

就学前の幼稚園選びという視点で見ると、この段階であればネームバリューの高い伝統校のほうに人気の軍配が上がるといえるだろう。人気の名門幼稚園は、学習院幼稚園や雙葉小学校附属幼稚園などが挙げられる。

御三家を上回る人気の新設校が台頭

次の小学校受験となると、この伝統校or新設校のポイントは幼稚園よりも顕著となる。一般的に私立小学校の御三家は、青山学院初等部、学習院初等部、慶應義塾幼稚舎といった面々が伝統校として確立している。

一方、代表的な新設校としては、川崎市の洗足学園や、世田谷区にある東京農業大学稲花(とうか)小学校(2019年開校)が記憶に新しい。開校前から魅力的なカリキュラムが注目を集め、開校からわずか数年にもかかわらず13倍もの倍率をたたき出す超人気校だ。

各私立小学校の教育プログラムを見ると、伝統校・新興校とも次なる英語+中学受験を意識した勉強方法が重視され、そしてその通り中学受験に挑戦する層が多くなる。中でもその熱量がよりリアルなのは新設校だろう。中学受験の合格実績はそのままカリキュラムクオリティに通ずるため、各小学校とも有名私立中学校への進学実績PRはあからさまだ。

このことから「意識はしているものの中学受験のためだけに小学校6年間を過ごさせるのはちょっと…」と否定的な家庭は、伝統校をおすすめしたい。

ここまでで幼稚園から小学校の学校選びについて紹介したが、とはいえ「お受験」はそんなに容易ではない。こと幼稚園・小学校受験においては子どもの努力だけでなく、親の経歴(学歴、職歴、現職、年収など)や教育姿勢というものが圧倒的に重要視されることを念頭に置いておきたい。

特に伝統校の場合、入学試験はそれなりに厳しいものとなるため、然るべき対策が必要になる。一方の新設校の場合、有り体にいえば、トップ所得層だけでなく中間所得層の家庭も多いことから、家庭で判断されるというよりはそれなりの教育軸や信念を持っていれば問題ないといえる。双方に共通するのは、親が子どもの成長をバックアップするという信念だ。それをはっきり言語化するのがお受験突破のポイントだ

中・高は志望大学を見据えた学校選びが肝要

中学校・高校になると、学校選びの選択肢は「公立」か「私立」かがポイントとなってくる。トップ大学の合格実績を見れば一目瞭然ではあるが、首都圏に限っていえば、私立のほうが有利な傾向にあることがわかるだろう。中高一貫校という選択肢もあるため、この項では中学校・高校受験をまとめて俯瞰していく。

この段階のオーソドックスな進路としては、3パターンに分類できる。

  1. 国公私立中高(中高一貫校)
  2. 公立中学校→私立高校
  3. 公立中学校→公立高校

まず、東大、一橋大をはじめ、早慶上智、ICUといったトップ大学「以外」を目指すのであれば、中学受験はスルーして、自分に合った公立高校に進学すれば良い。ただ、もし難関一流大学を目指す意志があれば、圧倒的に私立中高一貫校の方が有利だ。そのため、家庭に金銭的余裕があるならば、私立中高一貫校の選択肢をおすすめする。

先に挙げた3パターン以外にも、今注目を集めている進路がある。それは「公立の中高一貫校」だ。

公立の中高一貫校は6年間という一貫教育の環境を生かして子どもたちが伸び伸びと学べるほか、学費の安さが魅力である。比較的高い大学進学実績を誇るが、私立中高一貫校に比べるとしっかりした入試対策を行うわけではないため、その辺りを不安視する保護者もいるようだ。

また公立の中高一貫校への入試は、試験対策がしにくいという難点もある。一般的な入試問題と比べると、出題傾向は総合問題寄り。ただ暗記をすればいいという試験ではなく、さまざまな科目の知識が総合的に問われるため、対策のしづらさは顕著だろう。そこに時間と労力をかけるのであれば、中学受験はいったんスルーして、都立のトップ高校を目指すというルートが現実的という見方もある。

よって、将来的に難関大学や医学部・薬学部といった高難度の大学を志望する可能性があるのならば、圧倒的に私立中高一貫校への進学をおすすめする。そして、中学受験を決めるにあたっては、大学までの進路を見据えた選択が重要なポイントとなる。

中堅大学より海外大学進学がおすすめ

最後に大学受験はどうだろうか。これまでの幼稚園〜小・中・高の学校選びと異なり、大学選びにおいては親の判断基準ではなく、子ども自身の希望や好みが色濃く反映されていく。ただ各大学が持つ学力・レベル・偏差値というものは、自身がどうがんばってもすぐに上げられるものではない。また同様に後から容易に上がるものでもない。ゆえに、いかに志望校の目標を高くしておくか。ここが重要になってくる。

大学選びの選択肢となるのは「国立」or「私立」、「理系」or「文系」など。学部で見るとつい最近までのトレンドだった政策系学部、情報系学部は今もなお人気の傾向だが、ここ最近は全体的に大きく理系学部の人気が高まっている。

よって、まずは大学名よりも先に学びたい分野を早い段階から決めておき、学部の当たりをつけておく。さらにはもちろん大学まで決めておくことが懸命だ。特に国立大学を目指すのであれば、対策は早ければ早いほど良い。もっといえば国立の受験対策は高1から始めておきたいところである。

中学受験の段階から勉強に励んできたのであれば、下位国立大学や中堅私立大学(日東駒専、産近甲龍以下)という選択肢のほかに、「海外大学」の進路も視野に入れたい。(詳細はこちらに記載しているのでぜひご覧いただきたい。)

その英語漬けの異国・異文化の環境に身を置いた大学3〜4年間は、その後の人生を左右する貴重な経験だ。国内で働くにしろ、海外で働くにしろ、海外大学を視野に入れて学校選びを行うのは賢い選択だといえる。

今後グローバル化がより進んだとき、世界基準で活躍できる人材は強い。そのためにも学校選びは広い視野で行い、できることなら幼稚園から大学進学までのロードマップを描いておきたい。

ルートマップマガジン社 取締役/雑誌編集局 ルートマップマガジン編集部 編集長
追手門学院大学客員教授、教育ジャーナリスト、『大学ジャーナル』編集部 編集委員、アロー教育総合研究所 客員研究員。2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、他学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。『現代ビジネス』『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『週刊ダイヤモンド』『ダイヤモンド・オンライン』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国4,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2022年11月現在)。
著者に『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。放送大学大学院文化科学研究科修士課程在籍中
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