大学入試の志願動向を調査している豊島継男事務所の調べによると、2026年度入試の私立大学医学部の志願者数は、前年度比102.4%(25年度101.0%)となり、4年連続の増加となるか否か、微妙なところだ。
私立大学医学部31校のうち27校を集計、志願者増となったのは12校、志願者減は15校。前年度は増加14校、減少17校であり、今年度と大きな差がないと言えるだろう。
「医学部全体では微増だが、大学ごとの明暗が分かれている」という状況である。志願者数が大幅に増加したのは、岩手医科大学、獨協医科大学、埼玉医科大学、東邦大学、日本大学医学部などだ。
注目すべきは、医学部の志願者が他系統とは異なる動きを示している点である。大学入試全体としては年内入試の拡大に伴い、一般選抜の志願者減少が多くの学部で見られる。しかし医学部は、一般選抜からの入学率が74.8%(25年度入試)と依然として高い。つまり、多くの志願者が一般選抜を重視しており、「年内入試シフト」による一般選抜の競争緩和が起きていないのである。
国公立大志願者は少数精鋭化が進む
この背景には、医学部受験特有の事情がある。医学部志願者は学力上位層が中心であり、国公立大学医学部を第一志望とする受験生も少なくない。実際、国公立大学医学部の志願者数は3年連続で減少しているものの、これは医学部人気の低下を意味するわけではないだろう。むしろ、少数精鋭化が進み、第一志望として出願する受験生の割合が高まっているとも考えられる。
入試方式別に見ると、一般選抜前期は前年比103.7%と前年を上回った。一方で、共通テスト利用型の前期Aは99.9、後期は87.7と減少している。これは26年度共通テストの平均点下降が大きく影響したと考えられる。得点状況に不安を感じた受験生が共通テスト利用方式の出願を敬遠し、個別試験重視の一般選抜へシフトしたようだ。
なお、共通テスト利用型の前期Bは113.7%と大きく増加しているが、この方式は近畿大学のみの実施であり、医学部志願者全体の傾向を示すものではない。
また、一般選抜後期が98.9%と前年を下回った点も医学部らしい特徴である。医学部以外の学部では前期不合格後に後期へ出願が移行するわけだが、医学部では事情が異なる。医学部受験生の中には「医学部以外なら進学しない」「浪人してでも医学部を目指す」という層が一定数存在する。そのため、後期募集への流入が限定的となり、一般後期の志願者数が大きく増加しなかったと考えられる。
男女別では、男子102.5%、女子105.1%といずれも前年度を上回った。
特に女子の伸びが大きく、女子比率は43.2%から43.9%へ上昇した。ただし男女間で大きな差があるわけではなく、医学部人気は男女ともに堅調であったことが分かる。
さらに長期的な視点で見ると、医学部人気の安定ぶりが際立つ。26年度の志願者数は約10.7万人で、ピークだった17年度の10.8万人に対して99.1%の水準を維持している。少子化によって18歳人口が減少しているにもかかわらず、医学部の志願者数はほぼ横ばいで推移しているのである。
総じて26年度医学部入試は、「志願者増」という表面的な数字以上に、安定した人気が特徴である。少子化時代にあっても医学部は特別な存在であり、受験競争は今後も高い水準で維持されると考えられる。
