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塾長百話(第1回) 何のための学びか

著者は35年学習塾業界に携わり、全国の多くの塾長へのインタビューから、その教育哲学に感化されてきた。ここでは、彼ら塾長や、あまたの教育改革者たちの金言をご紹介していく

「雪どけに 凛と佇む 福寿草」

水ぬるむ三月。受験シーズンも佳境。中・高校生それぞれが、はじめて人生の試練に挑む。彼らにとって志望校という眼前の目標は、あまりにも大きな「壁」にも見えるだろう。しかし、人生はとても永い。試練はくり返し何度も眼の前にたちふさがるーーー。はじめての試練を超えた彼の眼に、どんな景色が写るのだろうか。

東京・目黒の青藍学院代表の林政夫氏はこんなことをいう。

「30年間教えてきて、大事なことは発想の仕方、考え方だと思うようになりました。塾のテーマのひとつ『状況を切り拓く力』というのは、子どもは大人になっていろいろな困難にぶつかるわけですから、その困難にどうたち向かうか、その力をつけるのが、本来の教育のあり方だという意味です。そしてその手段が知識であり、経験であるわけです」

同塾では一学年14人の生徒しか入塾できない。「それ以上の生徒さんをお預かりするのは難しい」と代表。これは、受験指導で毎日厳しく叱咤激励される塾のイメージには遠く、むしろ真逆かもしれない。

まずは、困難にどう立ち向かうか。その手立てを教えるのが先だろう、と林塾長はいうのだ。なお、保護者との勉強会を月一回催している。「どのように子どもと向きあえばよいか、皆さんと一緒に考えています。子育てして成長するのは、実は親なんです」

何人もの入塾ウェイティングがいるという。子どもにとって、本当に必要なことは何だろか。改めて考えさせられた。

片倉剛
教育コラムニスト
本誌専属の教育コラムニスト。学習塾業界、取材歴35年。学習塾業界雑誌 私塾界『月刊私塾界』編集室室長、塾と教育社『月刊塾と教育』執行役員を経て現職。前職の編集者時代では『学習塾白書』の創刊スタッフ、「地方塾活性化セミナー」をプロデュース。全国の学習塾、学校の降盛を見続けた。他、『成功する個別指導教室』(塾と教育社)の責任編集。法政大学文学部日本文学科卒業
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