「東北地方の小さな公立大学」にも関わらず、日本全国、さらには世界各地から学生を集め、独自の存在感を発揮している大学がある。それは、国際教養大学だ。
開学は2004年4月。誕生から20年あまりで、「グローバル教育に力を入れている大学第1位」「小規模だが評価できる大学第1位」など、トップレベルの評価を獲得して、大きな存在感を発揮している。
同大の授業はすべて英語で行われ、学生の4人に1人が外国人留学生で、海外大学院への進学率は、なんと55.0%に達している。
受験生募集の苦労とは無縁に思える国際教養大学だが、このたび、首都圏の私立学校と包括連携協定を締結して話題だ。
その学校は、千葉県にあるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の芝浦工業大学柏中学高等学校。
今回の協定により、高校生は、大学が実施する英語研修プログラムなどに参加したり、探究活動に対して大学教員により助言・指導を受けられるようになる。

協定書にサインし、握手を交わす国際教養大学 モンテ・カサム学長(右)と芝浦工業大学柏中学高等学校 中根正義校長(左)
「教育」の価値観が高校と大学を結んだ
この提携は、公立大学と私立学校の協定という点で全国的に珍しいだけでなく、県外の他大学、それも工業大学の附属校という「意外なペアリング」であり、県外の私立学校と包括連携するのも同大にとって初めての試みとなる。
しかも、協議開始から、わずか3か月で締結に至るという「スピード展開」だったというから驚きだ。
なぜこのようなことが実現したのか。それは、両校の「教育」に関する価値観に共通点があったからといえる。
芝浦工業大学柏中学高等学校は、SSHならではの理数教育もさることながら、教科や学年を縦横断する探究指導の教員チームを編成し、さらに探究教育の充実を図るためリベラルアーツ教育の導入を模索していた。
対する国際教養大では、実社会でリベラルアーツを活かす「応用国際教養教育」を展開している。「(実学の代表とも言える)理数教育にリベラルアーツという横串を刺したら何が起きるのかを見てみたい」と語るのはモンテ・カセム学長。探究とリベラルアーツの「ハッピーな出会い」になった。
志願者増や進学実績の充実など打算的な目的ではなく、生徒の「学び」を軸にした高大連携―。そんな当然すぎる発想が両校の縁を結んだのだ。これは、今後の学習塾のあり方に対する、大きな示唆になるだろう。
受験知識を教え、志望校に塾生を送り込む。それは学習塾の重要な使命だが、「教える」という機能のさらなる拡大を図っても良いはずだ。
本誌では「塾大連携」を推進しているが、学習塾と高等学校、学習塾と大学、「学び」による「塾高大連携」は、日本の教育の可能性を広げる。集団教育から抜けきれない中学校や高校、専門教育を得意としつつ、基礎教育を苦手とする大学。学習塾は、こうした学校教育の弱点を補完する存在になりえる。「学び」がひとを結ぶ。そんな動きがこれまで以上に広がっていくことを期待したい。
