2021年5月、米国で名門のカリフォルニア大学(以下、UC)は、入学選抜での学力試験の利用を廃止した。結果、21年度のUCの志願者は前年比16%も増加。全米のトップ学力層がこぞって集結する事態となった。
以降、米国の大学入試界隈は混乱期に突入する。他のトップ大学でも同様のことが起これば、米国大学受験を考える日本人学生の命運も大きく変わるだろう。
現在、日本で米国の大学や入試の事情を知ることは難しい。海外大学情報を発信する専門家がそもそも少ないのだ。
そこで、日本で数少ない海外大学ジャーナリストの筆者が全国300塾・塾関係者からの取材を実施し、英国、豪州も含めた総合的な大学序列図作成を試みた。それが以下の図である。左軸には国内大学も掲載し、海外大学と比較しやすくした。
なお、マップに記載しきれなかった「リベラルアーツ大学」を含め、より詳細な地域別大学マップを今後掲載予定である。高校生や社会人志望者のために、海外大学の学部入学、編入、大学院進学に役立つ情報を発信するので、ぜひ期待してほしい。
話しを戻そう。米国のトップ州立大学であるUCの学力試験利用廃止は、現地の関係者によれば、今後さまざまなトップ大学に波及するといわれている。このような大胆で急激な「変化」こそ、米国の大学を目指す受験生にとって怖いところでもある。今後、関係者にはぜひ米国の動向を注目いただきたい。
日東駒専、産近甲龍の受験生にチャンス到来
まず、UCのテスト利用廃止の背景とは人種差別と貧困問題だ。
マイノリティや貧困家庭出身者は、お金や時間をかけてSATなどの学力試験テスト対策ができないため、その他の受験者と比べて不利だ。それが米国では受験における差別だと考えられている。事実、New Americaの21年の調査では、18歳以上の成人の67%が共通テスト利用に反対している。
最終的にこの問題は、カリフォルニア州で裁判にまで至るのだが、判決を受け、UCは共通テスト利用の廃止を決定する。こうした背景があって、今後の入学選抜は、学校の成績、小論文、課外活動での成果などがより重要になりそうだ、というのがもっぱら関係者の間の話である。
さて、トップ州立大であるUCの入試改革と聞いて、成績上位者だけの話だと勘違いしないでほしい。実は思ったより入学のチャンスは高いといえる。
例えば、日本の日東駒専(日本大学、東洋大学、駒沢大学、専修大学)、産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)クラスを目指す場合、米国の大学を受験しようとなれば、TOEFLなどの英語対策だけで手一杯になりがちだったが、共通テスト利用廃止によって、米国留学のハードルは格段に下がるので、今後は狙い目といえる。
本来、アメリカの学力テストであるSATやACT(日本でいう共通テスト)は、本来難しいテストではないため、対策すれば、日本人はむしろ高スコアを獲得しやすく、有利だ。
万が一、英語力が足りなくても、入学までに規定の点数を取ればよいという条件付きで合格を出す大学もあるのでぜひ検討してほしい。
本邦初のW合格調査東大vs米国名門大学
最後に、面白いデータを紹介したい。筆者が日本の塾関係者100人に行った、米国と日本のトップ大学のW合格(国内と海外の複数大学に合格したらどちらへの進学を塾生に薦めるか)のアンケート結果だ。
さっそく下の結果を見てほしい。まず、奨学金が取れる場合と取れない場合で若干の違いがあるものの、ほぼ、ハーバード大学やアイビーリーグのような、米国のトップ大学が勝っている。
唯一、日本の大学が同等といえるのは、東京大学や京都大学と、バーバード大学以外のアイビーリーグ7校(イェール大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ペンシルバニア大学、ブラウン大学、ダートマス大学、コーネル大学)に合格した場合のみだ。それでも、国内大学を薦める塾長・塾職員の割合は40%代。やや劣勢だった。
日本では、海外大学の情報はごく一部のトップ校に限られ、学生が進路を検討する際の壁になっている。しかし、中堅大学まで含めると多様な大学、多様な入試形態も存在する。それを知ることで、より合格に近づくだろう。
今回の記事を参考にして、日本だけでなく、海外までの広い視野で進路を考えるきっかけになれば本望だ。
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