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結果を出す!大学・塾関係者のためのSNS特集

全世界的な基本インフラとなったSNS。生活に不可欠のコミュニケーションツールであり、強力なプロモーションツールとして、多様な場面で活用されているが、大学・塾における好事例は皆無といえる。SNS活用の極意とは何か。エキスパート2氏に話を聞いた。 本誌 副編集長 田嶋裕

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国立青少年教育振興機構の調査によれば、日本人の高校生の98.8%が何らかのSNSを利用している。

つまり、SNSを使えば、すべての高校生に広報が可能と言っても過言ではない。

大学や塾もSNSプロモーションを展開しているが、どこも「いまひとつ」というのが実情だ。一体、何が原因なのか。

「大学や塾がSNSで配信している動画を見ると、その原因がはっきりします」と話すのは、本誌の広報・集客支援局SNS動画プロジェクトマネジャーで、大学広報などをサポートしている松井祐太氏だ。

その理由は、まず、大学・塾が発信する情報が、視聴者の求めているものと合致していないこと。つまり、情報の送り手と受け手の間に齟齬があるのだ。

わかりやすい事例の一つが、よくあるカリキュラムや施設・設備紹介の動画だろう。こうした「調べればわかること」はあまり求められていない。

もう一つよくあるのが、「キャンパスで◯◯をしてみた」というケース。楽しい内容を投稿すれば、視聴者が喜ぶと考えてアップされたものである。

結果は、散々たるものだ。

松井氏によると、こうした中身のない投稿は、かえってマイナスプロモーションになるという。動画作成には、実はきちんとした視聴者の分析が必要なのだ。

「リアル感」が求められる

他にも「大学や塾の魅力」を台本通りに語る動画は多い。これも、松井氏は、プロモーションとしては甚だ疑問を感じるという。これらは、視聴者にとって興味のない情報になっているケースが大半だ。

そもそも、現在の高校生は、「作りもの」に対する警戒感が強い。よって、「やらされ感」のある動画や、一方的なPRはむしろ不信感を生んでしまう。

そうではなく、動画だからこその「リアルな情報」、「学生・塾生の素の姿」こそが、最良の素材だと松井氏は力説する。

その具体例を紹介しよう。

松井氏が手がけた立命館アジア太平洋大学(APU)のTikTokの動画である。

驚くのが、「作りもの感」を出さないために、あえて動画を「台本なし、絵コンテなし」で作成していること。

内容も、実にシンプル。

「カメラの前に自然に立ち、その場でこちらの質問に答えてもらうだけです」(松井氏)というもの。

その結果は、なんと、再生数10万回超えが続出。中には36万回に達したものもある(右写真)。

「学生が本来持っている魅力を引き出すことで、大学の魅力を伝えることを狙っています」(松井氏)。

分析を徹底する

本当にそれだけで再生数が伸びるのか。実は、裏側にはさまざまなノウハウがあると松井氏は明かす。基本となるのは、視聴データの分析だ。再生数だけでなく、途中で視聴中止した視聴者の割合やそのタイミングなど、細かいデータを全て洗い出していく。

特に、普通のインタビューでできがちな何秒かの「話しの間」。視聴者離脱につながりやすいポイントだ。

こうした点に注意しながら、不必要な部分をカットし、時にはBGMなども活用しつつ、テンポのよい動画を作成していく。

これは、定量的なデータと、経験による「感覚」を融合する作業といえよう。

「ポイントさえつかめば、TikTok、Instagramの『ショート動画』の拡散力は抜群です。フォロワーの数に関係なくバズらせることができます」(松井氏)。

シビアに「リアル」が求められる動画だからこそ、生の『人』にフォーカスを当て、大学・塾の魅力を伝える必要がある。

「次のアクション」を具体的に

YouTubeやInstagramの場合、内容のクオリティもさることながら、サムネイルの良し悪しで再生数が決まるというのは知られた話だ。

大学・塾のSNSコンテンツは、「まだまだ作り込みが甘い」と本誌の広報・集客支援局SNS戦略プロジェクトマネージャーの橋本雄大氏は言う。

例えば、Instagramでただきれいな画像を投稿しているだけのケース。オシャレ系の大学などごく一部はそれで成功する場合もあろう。だが、基本的にはサムネイルでどれだけ注目を引けるかが勝負。画像とテキストを組み合わせて、できるだけ興味を引くことを考えたい。また、「キャプション(説明文)」の付け忘れもよくあるのでこれも要注意だ。

そして、SNSプロモーションで大切なのは、視聴者・読者にしてほしい「次のアクション」を明確に促すことだ。動画の最後や、Instagramのスライドショーの最後に、必ずしてほしいアクションを明示しよう。

橋本氏は、「大学のSNSを見ていると、目的が見えず、ただ面白いだけ、きれいなだけのポストが多い」という。

業界には、「教育とSNSはそもそも相性が悪い」と思い込んでいる人が多いが、「そもそも、いろいろな企業が試行錯誤しながら磨き上げてきたこれら最先端のテクニックを知らないだけなのでは」と同氏は疑問を呈す。

LINEで関係を深める

さて、動画やInstagramの画像で興味を持ってもらった後はどうしたらよいか。

それは、あの有名なLINEへの登録を促すことだ。

LINEの機能拡張ツール「Lステップ」を使うことで、「なかなか行動してくれない高校生や保護者に効果的に行動を促すことができます」と、全国に11人しかいないLステップ認定コンサルタントの橋本氏はいう。

同ツールには、登録者の興味関心分析や、メッセージの出し分けをはじめとしたさまざまな機能が用意されている。

そこで、まずは、登録後にプレゼントキャンペーンなどでアンケートを実施し、それをもとに登録者の興味関心を明らかにするのが基本だ。

そうすることで、興味関心に合わせて最適な情報を届けることができる。初めは宣伝は少なくし、高校生や保護者が受け取って「得した」と思う情報を届けよう。

単にオープンキャンパスや夏期講習の宣伝ばかりでは、登録者はすぐに興味を失ってしまうので、注意したい。

そのルールを守りつつ、登録者とコミュニケーションを取れば、今まで取れなかった志願者・入塾者を獲得できるだろう。

今、ビジネス業界では、SNSの活用方法が日進月歩で進化している。従来の「ビジネスとSNSの相性が悪い」という考えは時代遅れだ。現に、SNSの機能も、ビジネス活用を念頭にどんどん改善されている。

それだけでなく、新規のSNSが登場する気配もある。

単なる「お友達付き合いのアプリ」だったSNSが、今後は教育業界でも大きく影響力を高めるのは間違いない。

時代に乗り遅れないために、今回紹介した2氏をはじめ、専門家が発信する最先端のノウハウには常に耳を傾けていく必要があるだろう。

田嶋 裕
ルートマップマガジン 副編集長
アロー教育総合研究所 所長、 城西大学外部評価委員。大学入試に関する調査・分析を行う。新聞・教育専門誌での記事執筆、イベント講演多数。
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