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政策ジャーナリストが読み解く大学と政治」のリアル④
流通経済大学 大麻騒動から見える学内の闇

2026年3月、流通経済大学サッカー部で発覚した大麻使用問題。大学側は事実を迅速に公表したものの、廃部を選択肢に入れない姿勢や、1カ月を要した調査の実態など、釈然としない点は多い。筆者の独自調査によると、問題の根はサッカー部にとどまらない。第三者機関からガバナンス不全を指摘されながら改善が進まない、大学全体の構造的な闇が浮かび上がってきた。

流通経済大学(以下、流経大)は、新松戸(千葉県松戸市)と龍ケ崎(茨城県龍ケ崎市)の両キャンパスに、経済学部、共創社会学部、流通情報学部、法学部、スポーツ健康科学部を擁する、在籍者数約400人の私立大学である。

その流経大が2026年3月3日、記者会見を開き、男子サッカー部の寮内で部員5名が大麻を使用していた事実を公表した。大学側は同部の活動を無期限活動停止とし、監督と強化部推進室長を兼務する中野雄二氏の職務停止を決定した。

迅速な事実公表は、まず評価したい。23年に発覚した日本大学アメリカンフットボール部の薬物事件では、学内関係者による隠蔽が問題を深刻化させた。その轍を踏まなかった点は潔いと見る。

しかし、全容が未だ不明な初動の時点で大学側がサッカー部の廃部を選択肢から明確に除外した点は、到底納得できないものだった。廃部も視野に入れた解体的な出直しを宣言していれば、世間の評価はさらに高まったはずだ。教職員・在学生・受験生・保護者に対し、大学運営陣が保身よりも信頼回復を優先する覚悟を示す絶好の機会を、自ら手放したものに見える。

加えて問題だと感じるのは、調査の進め方だ。サッカー部は240人を超える異例の大所帯で全寮制で共同生活を送っており、その規模ゆえ、聞き取り調査だけで1カ月を要した。調査の結果、大麻の使用は5名にとどまるとされ、4月8日付で無期限活動停止措置が早々に全面解除された。

だが、これで真の原因究明が果たされたとは思えない。

原因は腐敗した学内組織にあり

筆者の独自調査では、サッカー部の寮は部員が昼夜を問わず24時間体制で出入りを監視し、部外者を厳しくチェックしていた。表向きの理由は防犯対策だ。だがそれだけとは思えない。

同じ流経大の教職員でさえ立ち入りを制限するような環境を意図的につくり出すことで、サッカー部は事実上の「学内聖域」と化している。240名超という「数の力」を盾に、監督と側近が大学全体を意のままに動かしている— と筆者には映る。

現に中野氏は24年3月、他大学監督へのハラスメント行為により、日本サッカー協会裁定委員会から3カ月の公的職務停止処分を受けている。それにもかかわらず、流経大は何事もなかったかのように同氏を職務復帰させた。ハラスメントが認定された後も教授・監督・強化部推進室長を兼務し続け、学内の実力者として君臨している。この対応は、断じて見過ごせない。

こうした大学側の不誠実な姿勢こそが、「何をしても許される」という誤った規範意識をサッカー部員に植えつけた元凶だと筆者は確信する。その帰結が、人目につかない聖域化された寮内での大麻使用だったのではないか。

問題の根深さは、外部機関の評価にも表れている。大学基準協会による「流通経済大学に対する大学評価結果(21年度)」では、内部質保証システムの再構築と諸課題の早急な改善が強く求められていた。入学基準についても、複数の学部で学生の入学前の学習歴や学力水準が明示されていないと指摘されている。

今回の大麻問題は、サッカー部だけの問題ではない。大学全体がガバナンス不全に陥っている構造的な問題の表れだと強く訴えたい。早急な体制刷新を視野に入れた、学校法人全体の組織改革が今こそ求められる。

本来の使命に立ち返るために

そもそも流経大は、貨物輸送の流通研究と人材育成を理念に掲げ、1965年に日本通運株式会社(現・NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社)の支援を受けて開学した産学連携型の大学である。その原点を、今一度問い直すべきだ。

現在、流通業・運輸業は低賃金や働き方改革の影響により深刻なドライバー不足に直面し、中東産の原油輸送など国内外のロジスティクスの安定性にも課題が山積している。流経大には、この現実と正面から向き合う責務があるはずだ。

そこで筆者が提言したいのは、社会人入学制度の整備と、両業界で働く社会人の積極的な受け入れである。流経大は開学以来、NIPPON EXPRESSホールディングス出身者を理事長に迎えるなど、同グループとの関係が深い。そのネットワークを生かし、パート従業員や非正規社員を含む全グループ社員への入学を呼びかけることも、十分に実現可能な一手だ。

また流経大のOB、OG組織である、校友会に入学者募集の営業協力や大学院進学を打診してもいいだろう。

幸い、新松戸キャンパスは常磐線と武蔵野線が交わる新松戸駅の至近に位置し、仕事帰りの社会人にも通いやすい立地にある。この地の利を生かさない手はない。

社会人学生が増えれば、大学内にも好循環が生まれると筆者は見る。社会人学生の職業経験を生かし、一般学生の就職活動を支援する仕組みを構築できるからだ。就職課と社会人学生、校友会が連携し、履歴書の書き方や面接対策のサポート、各企業への紹介といった橋渡し役を担う。

そして卒業後も、社会人学生が末永く流経大の後援活動の中核を担えるよう、校友会の組織体制を再度見直し、社会人学生の積極的な受け入れ体制を整える。

大学にとっても、社会人学生の多様な人脈はブランド力の向上や入学者確保に直結するはずだ。

流経大は今回の騒動を契機に、本来の使命である産学連携に立ち返るべきだ。流通・運輸業界で働く社会人を積極的に受け入れ、組織の刷新と教育の再生を同時に果たす——。それが流経大の再出発にふさわしい道筋だと、筆者は強く信じる。

政策ジャーナリスト
1981年生まれ。青森県出身。拓殖大学大学院地方政治行政研究科修士課程修了。学校法人新潟総合学園東京事務局職員、教育シンクタンク事務局、政党政策調査スタッフ等を経て現職。政治から大学政策や歴史的な経緯を語れるのが強み。共著として『経営学の主要人物がわかる本』(創成社)がある
2026 4/1
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