2024.6.26東洋経済新報社主催のイベント『10年後の勝ち組はここだ 「本当に強い大学」の選び方』に弊社取締役の西田が登壇しました。
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学習塾関係者のための
大学職員と繋がる方法

本誌が首都圏、関西圏を中心に、直近で全国150塾に聞いたところ、なんと135塾が大学との接点を模索していることが分かった。今回、塾はどう動けばよいのか、その事例と、大学職員の4人の有力者に聞いた。

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最近、大学入試が複雑だから大学と接点を持ちたい−。これは、取材した横浜市の大手塾職員の言葉だ。

実は、この大手塾に限った話ではない。本誌が首都圏、関西圏を中心に、直近で全国150塾に聞いたところ、なんと135塾が同様の意見だった。

理由は、主に塾現場で対策に困っている年内入試の情報を知りたがっているから。とりわけ小論文や面接、書類審査などが行われる「探究型」の入試のことである。

話題になっている東洋大学、桜美林大学、大東文化大学、関東学院大学、共立女子大学などの学力型の年内入試の要望も高い。

次々に新しい大学入試が出ている現在、塾は、そのための現場の人材育成がうまくいっていないのだ。これには、日頃の業務で手一杯で、大学の正しい情報を取得するのも至難の業などという事情もある。

秘策は、大学とつながること。入試や学校の最新情報がたやすく手に入り、塾サイドにもメリットがいっぱいだ。

大学受験に強い
塾の進路指導例

早慶、上理(上智大学、東京理科大学)、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)といった大規模メジャー大学は年々、入試が複線化し、近い将来、従来の入試方式では入りにくくなってくる。

無論、東洋大など一部の都心にある有力私立大学にもその傾向が強い。塾としては、今までのように、特定の大学群に安定して合格者を出すことが難しくなっているのだ。

故に、これら大学群だけを目指させると、塾としても他と差別化しにくくなってくるだろう。

ならば、難関大学合格のための有力併願校になり得るここぞという大学を積極的に発掘することが、これから塾に求められていることなのだ。これによって、塾生の満足度を上げることにもなる。

なんといっても、大学入試が複雑化して、第一志望校に落ちた生徒のフォローや、その保護者に合格した第二志望や第三志望の大学への進学を勧めることも塾の重要な役割となってきている。

万が一そうなった時のために、第一志望ではない大学をどう併願先として選ぶのか、それも重要だ。

拓殖大学、桜美林大、関東学院大、神田外語大学など、特定の学問分野や就職が強かったり、キャンパスの場所が良いと評価される有力中堅大学はいくらでもある。

桜美林大、拓殖大、関東学院大などが有力

ひとまず、最近の傾向として「自分の子どもの特性に合った大学・学部を教えてほしい」という保護者も増えている。そのような保護者に、塾生の性格にフィットするかどうかを分かりやすく、いかに伝えられるかがこれからの進路指導の秘訣と塾関係者(神奈川県大手フランチャイズ塾のマネジャーなど多数)は話す。

渋幕、フェリスなど
仕掛け人は塾関係者

もともと塾業界といえば、「高校入試指導」が主力と言える。大学入試はどちらかといえば、大手予備校といった暗黙のすみ分けが長年なされてきた。

とりわけ、塾は、高校入試の最新事情をいち早くライバルより先に手に入れようと、高校関係者と密にコミュニケーションをとってきた、四半世紀以上の長い歴史がある。

組織として、それを初めてきちんと行ったのが某大手中学受験塾だといわれている。

塾関係者は、校長や入試担当者の異動などにも敏感だ。高校内部の最新事情を保護者や塾生に保護者会や面談時に伝え、学校や入試がどう今後変化するのか補足情報として伝えるためだろう。情報源となっていた先生が異動や転職をする場合、代わりになり得る情報を提供してくれる先生を模索する行動も当たり前だ。

こうした努力を怠らず、いわゆる、この最新の情報を手に入れられる地域の学校人脈を持っていることこそ塾業界の強みであるといえよう。

面白いのは、高校などの学校関係者も学校改革などで塾関係者に意見を積極的に求めること。事実、そこから飛躍して、学校職員など内部にも塾関係者が入り込んでいる。

こういった、学校と塾の深い関係があったからなのか、入試を生業にしているのにもかかわらず、偏差値だけで学校の良しあしを決めつけない見方もできるのがこの業界のすごいところかもしれない。これは、総合型選抜で重要な力の一つでもある。

逆に言えば、偏差値だけ上がっても学校の中身(教育)もしっかりしていなければ評価されない厳しさもある。

例を示すと、近年は超難関校化した、広尾学園や洗足学園、さらに渋谷教育学園幕張、渋谷教育学園渋谷、西大和学園、フェリス女学院、神戸女学院などが無名に近かった時代、評価を上げた仕掛け人が塾業界だといわれている。

これはどういうことなのか。学校の中身にファンになった塾関係者が、どんどん優秀層を学校に送り込み、ブランド力(偏差値、志願者、人気)を一気に引き上げたのだ。

渋谷教育学園幕張、渋谷教育学園渋谷あたりはそれに近い話であることは、有名な話だろう。このあたりは、本誌の創刊号でも、理事長に取材したのでこちらを見てほしい。

GMARCH以下は
予備校より学習塾

さて、少子化もあって、「高校入試指導」だけでは立ち行かなくなった塾業界は、近年になって大学受験指導に力を入れている。

大学受験といえば「予備校」が主役で、学習塾はメインではないと考えている教育関係者も多い。実は、むしろ、受験生の中で一番ボリュームゾーンが多いGMARCH以下の学力層が多く通うのは学習塾なのだ。

その学力層が主にターゲットにしている私立中堅大学や地方国公立大学は入試の変化も激しい。筆者は取材を通して、多くの大手塾関係者がこの部分で、塾として生き残り、ビジネス拡大のヒントになると考えているように感じる。

さらに、学習塾の強みは、一貫指導をしている点。いわゆる、学習塾であれば、高校受験を終えた生徒に対してすぐに大学受験の指導にアプローチしやすいのだ。これらも相まって、学習塾の大学受験における存在感は年々増している。

ただ、大学受験に力を入れ始めた歴史が浅いので、人材育成の面、大学の情報自体に弱いという現場の事情もある。

特に塾のお家芸である、高校受験のように、学校職員と積極的に情報交換を行い、進路指導や試験対策を充実させるという点は、大学受験では発展途上だ。

大学を攻めるなら
今がチャンスだ

学習塾同様に、大学側も少子化に伴い、これまでやってきた広報とは違うものへの大転換の必要性に迫られている。さらに、大学入試改革や激化する年内入試への転向なども相まって、今までとは違う志願者獲得を模索しなければならない状況なのだ。

とりわけ中規模大学でそれが活発だ。従来の高校訪問だけではライバル大学に差をつけることができないという認識もある。そういった流れで、いくつかの大学で学習塾に注目する動きもある。全国約800ある大学で、全てがそうではないことを付け加えておきたい。

下の事例を見てほしい。それを踏まえ、学習塾と大学がつながるために、これからどのような秘策が考えられるか、いくつか例を紹介したい。

イベントから交流まで

まず、上の2つが手軽な方法かもしれない。形式ばったものではなく、塾内で行われている軽いものが多い。編集部の最新の調査では、これらが増加傾向だ。

3つ目は、ある程度大学との信頼関係が出来上がっている塾でいくつかの事例があった。

塾はすでに長年、高校受験に力を入れてきたので、高校現場の内容、人脈という売りがある。同様にさらに大学との同じ売りができれば、塾生にとっても塾にとっても塾のブランディング面でも悪い話ではないはずだ。

なんといっても、高校入試と同様に、大学入試のことは大学職員に聞くのが一番である。

多くの塾関係者に取材すると、高校に比べ、大学と接点を持つことはなんとなくハードルが高いと考えているのも事実。

確かにそのような面もある。高校に比べて、大学は組織が大きく、権限も複雑だからだ。一方で、塾に対してオープンで積極的な大学も多く存在する。

今号では、編集部が一押しの大学をいくつかご紹介しよう。これらの大学職員は、業界では有名人であり、自校にとどまらず、他校の入試、広報面ではさまざまなことを知るスペシャリストだ。>>イチ押し大学はこちら

ルートマップマガジン社 取締役/雑誌編集局 ルートマップマガジン編集部 編集長
追手門学院大学客員教授、教育ジャーナリスト、『大学ジャーナル』編集部 編集委員、アロー教育総合研究所 客員研究員。2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、他学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。『現代ビジネス』『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『週刊ダイヤモンド』『ダイヤモンド・オンライン』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国4,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2022年11月現在)。
著者に『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。放送大学大学院文化科学研究科修士課程在籍中
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