学習参考書業界は今、大きなビジネスチャンスになりそうです。
高校の「新課程」は2022年度入学生から順次始まり、これを学んだ生徒が受験する25年度入試から、新課程に基づいた大学入試が本格的に始まるのがその理由です。本来であれば、大学入学共通テスト(以下、共テ)も25年度から開始される予定でした。しかし、文部科学省が「英語民間試験」や「記述式問題」を早期導入しようとした結果、制度面などで多くの問題が噴出し、導入はいったん見送られていました。
なお、「知識・技能」を測る旧センター試験から、「思考力・判断力・表現力」を問う現・共テへ移行した理由は変わっていません。21年度入試からすでに5回の共テが実施されていますが、高校や塾での指導と試験の難易度にズレが見られます。
さて、学習指導要領はおよそ10年周期で改訂があり、多くの参考書もそれに合わせて刷新されます。もちろん、それを扱う出版社は、新課程のスタートに合わせて新しい参考書を一斉に刊行する流れになります。
この流れ、実はその参考書の著者らには非常に「ありがたい」出来事です。それは、過去に出版した参考書も増補改訂版になるため、ゼロから作成するよりも労力が少なく「新刊」として売り出せるからです。
とはいえ、誰でも改訂版を出せるわけではなく、過去の売り上げ実績がものを言います。
なお、「共通テスト対策シリーズ」など、複数科目で構成されるシリーズは全て改訂される傾向があります。
筆者の場合、2回改訂したものが3冊、1回改訂が1冊あります。さらに、編集を入れて内容を多少変えて出版したものも2冊あります。筆者が扱う領域が「受験化学」という狭い分野で、書けるテーマにも限界がありますが、ニーズに合わせて編集や構成を変えることで、複数冊の同時刊行を実現してきました。
動画付き参考書や、独学の受験生の増加か
近年、動画リンク付きの参考書が増えているのは、皆さんご存じでしょうか。著者は参考書の執筆はもちろん、動画の撮影をせねばならず、大変な作業量になります。受験生は予備校に行かなくとも、授業のように解説してくれるので、自宅である程度は理解を深められ、塾や予備校に通わない生徒が今後さらに増えると考えられます。年内に学校推薦型・総合型選抜入試の合格者が増えたことで、高校課程の内容を全て学ぶ必要性がないといった理由もあるでしょう。
いずれにせよ、筆者は、大学進学後の学力不足につながることを危惧しています。そのため、入学前に課題を課したり、国公立大学の学校推薦型選抜のように、共テの受験を義務付けるなどの対策を特に私立大学側で行うのも良いと思います。
一昔前から「大学全入時代」と言われていますが、上位大学の多くは一般選抜の比率が6割前後ですから、依然として上位校の受験生は学力試験重視です。ただ、予備校講師の立場から見ても、一般入試組と推薦入試組には学力差が年々広がっているのが気になります。
大学や国側は「学力より個性」を重視するという理由で、「学力試験なし」の推薦入試を拡大していますが、学力低下を懸念する声が多いのも事実です。
最近は東洋大学、大東文化大学、桜美林大学、共立女子大学など、学力試験付きの年内入試(推薦入試)が増えています。受験生は、受験の機会が増え、合格のチャンスが広がった点は歓迎モードです。
ただし、高校の学習範囲を終わらない段階で受験となることや、年内という早期に合格を出し、年明けの国公立大学まで気分が持たないことなどについて問題視する関係者の声があるのも事実です。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスが、日本で初めて大学推薦入試を行って30年超。親世代も推薦入試を経験した世代になり節目の時期に入りました。そこで出てきた学力年内入試は、「最低限、大学で学ぶための基礎学力は必要だ」という大学側の危機感の表れなのかもしれません。
