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「受験秀才」ではなく、
「医師になる人」を育てたい

三谷 昌平
東京女子医科大学 学長
みたに・しょうへい/1958年鳥取県生まれ。84年東京大学医学部卒。88年同大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京大学医学部助手、日本学術振興会海外特別研究員、東京女子医科大学講師、助教授を経て、2007年教授。10年統合医科学研究所長、19年統合教育学修センター長を歴任し、24年より名誉教授。25年から現職。
https://www.twmu.ac.jp/univ/

全国133塾関係者(270人)への弊誌のアンケートで、「改革をしている大学」が70%と、イメージが大きく変化している東京女子医科大学。「世界で唯一の女子医科大学」という強みを今後どのように生かしていくのか。その実態を伺った。

全国133塾関係者(270人)の調査で、貴学は学閥の強さ、学校の先生からのすすめなどとともに、「改革をしている大学だから」という進学理由が上位でした(下図)。貴学の改革について具体的に教えてください。

本学では2024年の不祥事を深く反省し、教職員一丸となって体制を一新してきました。

それだけではありません。

本学は、以前から教育面の評価は比較的高かったのですが、現在、大きなカリキュラム改編を進めていて、27年度から新しいカリキュラムをスタートさせる予定です。おそらく「メジャーリビジョン」と言っていい規模の大改革になると思います。

具体的に教えてください。

本学は、日本で最も早い時期に「アウトカム基盤型教育」という制度を導入した大学の一つです。

従来の教育は、どちらかというと「教員が教えたから、学生も理解したはず」という考え方でした。

でもアウトカム基盤型教育では、「最終的に学生が本当にできるようになったか」を重視します。つまり、「何を教えたか」ではなく、「卒業時にどのレベルまで到達できたか」を基準に教育全体を設計するものです。今回のカリキュラム改変では、それをさらに充実させ、「女子医大を卒業したら、医師としてかなり高いレベルに到達できる」という教育を実現したいと思っています。

今回の改革の背景には、医療現場の変化も関連ありそうです。

非常に大きいですね。特に重要なのが、「診療参加型実習」です。21年に医師法が改正され、それまで「見学」が中心だった医学生の実習が、指導医のもとで実際の診療に参加できる形へと変わりました。

これはかなり大きな転換で、これからの医学生には、「現場の一員として動ける力」が求められます。ですから本学でも、「どうすれば学生が実際の臨床現場で力を発揮できるか」を、臨床の教員たちと繰り返し議論しています。

単に知識を覚えて国家試験に合格するだけではなく、「患者さんの前で考え、動ける医師」を育てたいのです。

入試も変わるそうですね。

はい。これからは、面接をさらに重視していきます。本学では、全受験生に対して面接回数を1回から2回に増やして実施する方向で準備を進めています。

医学の知識そのものは、今後ますます学び方が変わっていくと思っています。AIやデジタル技術も発達していますし、「知識を覚える」ことだけの価値は、以前とは変わってきています。

もちろん国家試験に合格することは大切です。ただ、「国家試験に受かればそれでいい」という時代ではありません。

特に、診療参加型実習が始まったことで、学生の段階から患者さんと接する機会が増えています。

そうなんです。だからこそ、「患者さんが何を求めているか」を理解できる医師でなければ、本当に活躍できない時代になっていると思います。

患者さんの不安や痛みを理解し、相手の立場に立って考えられるか。チームの中で周囲と協力できるか。そういう力は、単純な学力試験だけでは見えません。

だから面接を重視している。

はい。もちろん学力は必要です。ただ、それだけではなく、「この人は医師として成長できるか」「患者さんと向き合えるか」という部分を、できる限り丁寧に見たいと思っています。

本学が目指しているのは、「受験勉強が得意な人」を集めることではなく、「よい医師になれる人」を育てることなのです。

面接も「教育改革の一部」なんですね。

そうです。入試、教育、実習、卒業後の姿まで、全部つながっています。だからこそ、「どんな学生を迎えるか」は非常に重要なんです。もちろん、学生を引き受けた以上は、「必ずよい医師に育てる」という覚悟でいます。

早稲田大学との「医工連携」

早稲田大学との連携は現状どうですか。

本学と早稲田大学は、長年にわたって医工連携を進めています。現在も、早稲田大学の学生さんが女子医大側の研究室に来て一緒に研究を行っていますし、合同研究発表会も定期的に開催しています。

今の医学は、単に臨床知識を覚えるだけでは成り立たなくなっています。AI、ロボティクス、データサイエンス、医療機器など、新しい技術が次々と医療現場に入ってきていますから。

外科系では高度な医療機器を使うことが、すでに日常になっています。だからこそ、学生時代からそうした技術に自然に触れられる環境は非常に重要なんです。

近年は共学化する女子大学も増えています。

本学は、これまで長く女性医師、女性医療人を育ててきました。今後も共学化は予定していません。

最近では、他大学でも、男女比が半々に近い医学部が増えています。ただ、その中でも、本学がこれまで積み重ねてきた「女性医師を育てる文化」は、今でも大きな意味を持っていると思っています。

具体的な特徴はなんですか。

卒業後も含めて、女性医師が働き続けやすい環境づくりに力を入れていることですね。

実際には、医師になった後、出産や育児などを経て、当初思い描いていたキャリアを十分に実現できない女性医師も少なくありません。

だから本学では、「この分野で頑張りたい」という意思のある方に、しっかりチャンスを提供したいと思っているんです。本学の卒業生に限らず、思いのある方には「ぜひ一緒にやりましょう」と積極的に声をかけています。

本学としては、「女性だから難しい」で終わるのではなく、「どうすれば活躍できるか」を一緒に考え、支えていく大学でありたいと思っています。

最後に、これからの東京女子医科大学について、どのような姿を目指していますか。

「この大学に来て良かった」と思ってもらえる教育を続けていきたいですね。

そして、社会から信頼される医師を育てたい。そのためには、大学も変わり続けなければいけません。

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