前回、出版によって執筆者入ってくる収入(印税)のポイントをご紹介しました。今回は、さらに踏み込んで印税を執筆者側でコントロールする方法をお伝えします。
最近は、紙代や配送コストなどが高騰しています。それに伴い、書籍代も高くなってきました。書籍代が高いと印税も高くなるので、執筆者としては嬉しいと感じる人が多いかもしれません。
ですが、販売数が伸びないというデメリットがあるのです。
特に学習参考書(学参)は、高校生のような被扶養者を対象にしているので、値段が高いと中身が良くても買ってもらえないケースがあります。
では、どうしたらよいのでしょうか。
実は、印税率を下げて本の値段を下げる、という裏技があります。私も当初は知らなかった方法です。ある時、自分の本よりページ数が多いのに価格が安い学参が目に止まりました。どうしてその値段が実現できるのか疑問に思い、編集者に聞いたことがきっかけです。
印税率をあえて下げて書籍の価格を安く抑え、販売部数を伸ばすことで、最終的に入ってくる印税の額を増やすことが狙いです。
一冊あたりの印税が減ってしまうのでもったいないと思う人もいるかもしれませんが、値段が高くて売れなければ、元も子もありません。
もちろん、値段を下げたからといって、本の販売部数が十分に伸びないリスクもあります。ですが、まずは多くの人に手に取ってもらうことが大切です。
気になる印税交渉は二版以後で行うと吉
さて、大切な印税交渉のとっておきのポイントをお教えします。
まず、出版する上で一番お金がかかるのは、初版です。
初版の際は、本のデザインや印刷のための「版」の作成など、さまざまなコストがかかります。初版発行の損益分岐点はだいたい70%といわれています。
初版の売れ行きが順調だと、二刷、三刷と追加で本を印刷(増刷)していくことになりますが、二版以降はデザインや版作成のコストがかからないため、損益分岐点はだいぶ下がります。
よって、初版が全て売れるとプラマイゼロで、二刷以降は確実に黒字化します。そこで、印税率の交渉をする際は、初版の印税は低くしても、二刷以降の印税を上げる契約にすると良いでしょう。例えば、初版は6%、二刷以降は10%とするのです。
この方法であれば、出版社も赤字を回避することができ、著者としても、売れれば印税が多く入るので、両者にメリットがあります。
また、増刷と似た用語で「重版」があります。増刷は同じ内容を刷り直すだけですが、重版は中身を加筆修正して再販することです。ただし、現状では、「重版」を「増刷」と同じ意味で使うことも多いです。こうした用語も知った上で印税の交渉を行いましょう。