我が子をどの学校や大学に入れればよいのか、第一志望校に落ちた場合はどうするべきかなど、親の悩みはいつまでも尽きません。
そこで、新企画「親子塾」の初回は、大学の志望校選択から、よくある間違いや成功するための秘訣を紹介します。
まず、現時点の成績と、入試の合格可能性だけで志望校を決めるのはやめましょう。これをすると、大学受験が人生のゴールになってしまいます。学力も大学受験時がピークとなり、肝心の大学入学後の成長が見込めません。
例えば、成績が良いからという理由で医学部に入ったものの、医学そのものには興味がなかったため、他の学部を再受験する、という学生も少なくないのです。よって、志望校は、自分が学びたいことを意識して選んでいくべきでしょう。
一方で、将来就きたい職業から「逆算して」志望校や学部学科を選ぶ場合はどうでしょうか。この場合、将来の夢に向かって、大学でも意欲的に学び続けることができます。
ただ、近年は、社会が急速に変化しています。高校生の時点でやりたかった仕事が、大学卒業時には斜陽分野になっていることもありえます。そもそも、大学で研究する中で自分の興味ががらっと変わることも念頭に置く柔軟性も必要でしょう。
私の教え子は、カメラが好きで大手のカメラメーカーに就職しましたが、カメラ市場の衰退で、なんと会社の主力ビジネスが健康分野に変わってしまったという失敗例もあります。
では、将来の夢が決まっていない生徒はどうでしょうか。この場合、自分が送りたい大学生活をイメージすることがポイントとなります。
まず、人は、環境に大きく左右されるものです。入学した大学によって、学生生活の環境が異なり、新しい出会いもあるので、その後の人生が大きく変わってきます。いわゆる、一生の友人との出会い、信頼できる教授との出会い、研究テーマや、書籍との出会い、新たな趣味との出会いなどさまざまです。そうした出会いも含めて、どんな大学生活を送りたいかをイメージするのです。
とはいえ、まだ体験したことのない大学生活を高校生の時点でイメージするのも難しいでしょう。そこで、大学の校風をいくつかの視点で調べることをおすすめします。それを知ることで、大学生活のイメージを膨らませることができます。
校風を知ることは年内入試で有利
まず、やりたいことがわからない受験生は、オープンキャンパスに参加しましょう。複数の大学を見比べれば、校風が多少なりとも違うことに気づくはずです。
さらに、大学職員や学生と話せば、より一層イメージが深まるはずです。
そして、大学が目指している方向性や、学生に求めること(大学の基本理念、アドミッションポリシー)を知れば、年内入試(学校推薦型選抜や総合型選抜)の志望理由書作成や、面接で他と差をつけられます。
一方で、リアルな大学の裏を知りたいなら、『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)がオススメです。
さて、志望校は、国内だけに限定する必要はありません。ぜひ、海外も一度検討しましょう。最終的に海外進学に至らなくても、海外の大学を調べることで、国内大学選抜の際に役立つメリットもあります。
かくいう私は、実は、イギリスの名門ケンブリッジ大学での滞在経験があります。同大学は、多数の「カレッジ」から構成されています。それぞれのカレッジごとの雰囲気の違いには大変驚かされました。
また、日本とは異なり、留学生や社会人も多く、多様なバックグラウンドを持つ人と外国語での交流機会が多くあります。社会に出た後もコミュニケーションスキルやプレゼンテーションスキルとなって活かせるでしょう。さらに、就職活動の幅も広がります。
ちなみに、国内でも海外と似た環境で学べる大学があります。立命館アジア太平洋大学(APU)です。「混ぜる教育」を掲げており、学生と教員の半数が外国籍。国際学生寮のAPハウスでは、24時間常に多文化環境で生活することになります。
学費の都合や語学力などで海外留学ができない場合は、選択肢としてオススメです。
さて、最後に、保護者の皆さんに一つアドバイスを差し上げたいと思います。それは、「最終決定は子どもに委ねる」ということです。
子どもは、すでに、私たちが使いこなせないSNSなどの最先端のサービスや技術を使い、これからの社会に対する「最新の感覚」を身に付けています。
一方で、私たちのような親世代の人間は、時代の変化に鈍感です。そのような主観では、将来性が無い誤った進路アドバイスをしてしまう可能性があります。
ちなみに、学校の先生も、入試制度の急激な変化に対応するだけで手いっぱいで、大学入学後のことまでをアドバイスするのは難しいのが現状です。
大学4年間は、子どもが社会で生き抜く素地を作る場です。そのために、子どもが最適な大学を選べるように、多面的な視点で親がサポートするという心構えが大切でしょう。