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「学びは大学入試で終わらない」
—上智での学びを土台に理系を学び直し、 イェールで研究者に

斉藤 淳
J PREP 代表
さいとう・じゅん/上智大学外国語学部卒業。イェール大学大学院政治学専攻博士課程修了、Ph.D.取得。イェール大学助教授を経て、2012年より現職。著書に『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版)『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA/中経出版)『世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)『斉藤先生! 小学生からの英語教育、親は一体何をすればよいですか?』(アルク)『一億人の英語習得法』(SB新書)など。
https://jprep.jp/

上智大学外国語学部で学び、交換留学先のカリフォルニア大学サンディエゴ校を経て、イェール大学大学院で政治学の博士号を取得、研究者となった斉藤淳氏。帰国後は国会議員、そして経営者へとキャリアを広げてきた。現在は、開成・桜蔭をはじめとする難関校生から、東大・海外大学進学を目指す生徒にまで幅広く支持されるJ PREP代表を務める。留学中に微積分や統計学など、理系科目を学び直した。斉藤氏のキャリアをたどりながら、上智で築いた学問の土台と、これからの時代に求められる大学教育について聞いた。

斉藤先生は、なぜ上智大学を選んだのでしょうか。

当時の上智大学は、日本で国際的な教育を受けようと考えたとき、非常に魅力的な選択肢でした。

今では外国人教員や海外で博士号を取得した教員は珍しくありませんが、当時の日本の高等教育は今よりずっと閉鎖的でした。

そうした中で上智大には、海外の大学で博士号を取得した先生が多数いらっしゃいました。カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取り、後に国連難民高等弁務官も務めた緒方貞子先生をはじめ、イェール大学で博士号を取得された猪口邦子先生、ミシガン大学で学位を取り、後に慶應義塾大学教授となった添谷芳秀先生など、世界の第一線で教育や研究を経験した先生方から直接学ぶ機会がありました。

私は学歴や人脈が欲しくて大学に行ったわけではなく、きちんと勉強したかったんです。上智大は先生方が真面目に授業をしているという評判もありました。将来的に海外で学ぶことまで視野に入れると、上智大は非常に魅力的でした。

外国語学部を選ばれた背景には、実は数学を手放した経緯があったそうですね。

そうなんです。高校2年生ぐらいで「上智大でいいや」と思って、数学を勉強しなくなったんですよ。当時の私立大学文系は数学がなくても受けられる大学が多かったですし、上智大の外国語学部もそうでした。今にして思えば、これは大きな間違いだったと反省しています。

ただ、上智大の経済学部だけは違いました。入試科目に数学を入れ続けていましたし、数学の基礎を大切にしながら経済理論を教えていた。岩田規久男先生や八代尚宏先生など、実力派の先生方から経済学を学ぶ機会もありました。外国語学部にいながら、分野を超えて学ぶことができたんです。

上智大の看板である外国語学部英語学科に進学されています。

英語だけではなく、社会科学のさまざまな分野を勉強しました。3、4年生の頃にはゼミを五つぐらい掛け持ちしていました。当時はそういう学び方もできたんです。

その後、米国へ留学されています。上智大での教育はつながりましたか。

かなりつながっています。1年間、交換留学でカリフォルニア大学サンディエゴ校に行きました。当時の外国語学部は単位換算の考え方も柔軟で、現地で英語で開講されている授業であれば、幅広く単位として認めてもらえました。

それ以上に大きかったのは、海外へ行く前に、レポートの書き方、文献の調べ方、そして英語で文章を書く方法などを教えてもらえたことです。

いきなり海外へ行って、現地の大学でいい成績を取るのは簡単ではありません。その前段階となる基礎教育を丁寧に受けられた。そこは上智大を選んで良かったと今でも感じています。

そして、まさにこの留学先で、高校でやめていた数学が再び必要になりました。微積分の教科書を引っ張り出して高校の基礎からやり直し、統計学も勉強しました。

その後、イェール大の大学院に進んでからも数学の授業を取り、最終的には日本の理工系学部の大学2年生ぐらいまでの数学を一通り学び直しました。

海外での存在感が大きい上智とICU

上智大は大学院や海外大学との距離も比較的近いのでしょうか。

そう思います。先生方に海外経験のある方が多く、海外で学ぶことが特別なことではありませんでした。実際、私がカリフォルニア大やイェール大にいたときも、日本から来ている学生の中には東京大学や早慶、京都大学の出身者もまんべんなくいましたが、大学全体の規模を考えると上智大やICU(国際基督教大学)出身者の存在感は際立っていた印象があります。政治学などの研究者にも上智大出身者が目立ちました。

それに上智大はイエズス会を母体としているので、世界の大学とのネットワークがあります。米国だと同会のジョージタウン大学やボストンカレッジのほか、ノートルダム大学といったトップ校とのつながりが挙げられます。世界各地の大学へ出ていく選択肢を持っていることは、現在も上智大の強みの一つでしょう。

一方、この30年間で日本の大学もかなり国際化しました。

そこは大きく変わりました。私が高校生だった頃、上智大は「日本国内で国際的な教育を受ける」という点で際立った存在でした。

今は多くの大学に海外出身の教員がいて、英語で行われる授業もあります。早稲田大学にも国際教養学部ができましたし、各大学が海外大学との連携を強めています。つまり、日本の大学全体が国際化したわけです。

情報へのアクセスもまったく違います。私が大学生だった頃、米国のニュース番組を見るために、上智大の図書館へ行って、米国から3カ月遅れで送られてくるVHSを借りていました。大学に行かなければアクセスできない情報がたくさんあったんです。

今ならYouTubeで世界中のニュースをいつでも見られる。英語で書いた文章も生成AIを使えばすぐに添削できます。外国語を学ぶ環境そのものが、誰でも手軽にアクセスできるようになりました。

生成AIの登場によって、「外国語教育」の意味も変わりますか。

変わるでしょうね。単純に「外国語を学べる」だけでは大学の価値にはなりにくくなります。だからこそ、その言語を使って何を学ぶのか、何を考えるのかが重要になると思います。

これは上智大だけの問題ではありません。技術や社会の変化によって、大学教育そのものに期待される役割が変わっている。その中で、各大学が自分たちの教育の意味を改めて考える時期に来ています。

では現在、上智大の強みをどこに見ていますか。

私は、もともと上智大が持っていた「教育機能」はもっと評価されてもいいと思います。日本の大学受験では長い間、偏差値や大学名、あるいは入試科目の多い少ないで大学を選ぶ傾向がありました。でも本来は、「その大学に通う4年間で自分をどうスキルアップできるか」という視点で選ぶべきですよね。

その点で上智大は、少人数で丁寧に教育することを大切にしてきた大学です。私自身もそこで基礎を身に付け、海外へ出て、さらに必要になったことを学び直してきました。

もう一つ、意外と見落とされがちですが、上智大は四谷という東京の一等地に、文系学部と理系学部が同じキャンパスに同居しています。理系学部がこれほどの一等地にあるのは珍しく、しかも一つのキャンパスが一体となって教育活動をしているので、理系の学生が文系科目を、文系の学生が理系科目を履修しやすい環境がある。

生成AIの時代、専門分野を超えて学ぶ力はますます重要になりますから、これは私自身の経験とも重なる、上智大が今こそ生かすべき強みだと思います。

最後に、いまの受験生に伝えたいことは。

大学に入ること自体をゴールにしないことですね。高校生で学ばなかったことがあれば大学で学べばいい。大学で学ばなかったら社会に出てから学べばいい。

私自身、高校で数学をやめましたが、その後必要になって学び直しました。上智大で身に付けた基礎も、その後の海外での学びにつながっています。

大学は「どこに入るか」だけではなく、そこで何を学び、その後どう学び続けるかで考えてほしいですね。振り返れば、上智大で身に付けた「学び方」が、その後のすべての土台になりました。研究者になり、国会議員を経験し、いまは経営者として仕事をしているのも、その延長線上にあると思っています。

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