2025.12.9日本経済新聞社『日本経済新聞』に弊社取締役の西田がコメント提供しました
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「早慶上智」に異変あり
上智理工、逆転の一手

渡辺 健太
ベネッセコーポレーション 教育情報センター センター長
わたなべ・けんた/1979年奈良県生まれ。2002年ベネッセコーポレーション入社。中国・広州倍楽生副社長、北海道支社長などを経て26年より現職。全国の教育委員会や高校・大学での講演会、研修会の実績多数。ベネッセ教育情報センターでは『VIEW next 高校版』を発刊している
木戸 葵
代々木ゼミナール 教育情報センター教育情報室 室長
きど・あおい/新卒入職後、札幌校進学相談室にてクラス担任業務をはじめとする校舎運営業務全般を担当した後、2024年より現職。入試情報・教育情報を収集・分析・発信する役割を担う。代ゼミ内部や全国の高校の先生方に講演等を通して積極的に発信を行っている
石原 賢一
教育ジャーナリスト/ 大学入試アナリスト
いしはら・けんいち/大阪市出身。京都大学工学部卒。1981年駿台予備学校に入職。2006年駿台進学情報センター長、17年駿台進学情報事業部長を経て24年退職。長年の大手予備校勤務での経験を生かし、大学・高校での講演、新聞・雑誌等の記事執筆、取材対応などで活動中

AD上智大学 制作:『ルートマップマガジン』編集部

早稲田大学の難化、東京大学「College of Design」の新設、そして上智大学理工学部の新学科―。「早慶上智」というくくりに、理系分野を起点とした変化の兆しが出ている。大学入試のエキスパート3人に、最新の入試動向と10年後の大学序列を聞いた。

本誌が全国319塾・721人の塾関係者を対象に行った独自調査では、大学群の呼称として「早慶上智」を使うとの回答が90%、「早慶」が82%でした。一方、「SMART」は10%、「早慶上理」は6%。塾・予備校の現場では、依然として「早慶上智」が強く定着しています。

木戸氏代々木ゼミナールでは「早慶上智」を使っています。ただ、入試難度や全国的な知名度、ブランド力という点では、早稲田大学と慶應義塾大学が一段抜けていると感じます。

渡辺氏高校現場では、一方で、「早慶上理」という呼び方も広く使われています。特に首都圏の中高一貫校では理系教育を強く打ち出す学校が増えており、東京理科大学を含めて捉える意味は以前より大きくなっています。

石原氏ただ、現状では早慶は別格でしょう。入試問題の質も違います。さらに早稲田大では共通テストを利用する方式や数学を課す方式もあり、最難関国立大との併願を意識した入試になっています。

早稲田の難化が上智に追い風か?

塾関係者からは「早稲田大は超難化している」という声も聞かれます。東京大学、東京科学大学、一橋大学など最難関国立大との併願層が厚くなれば、早慶上智を第一志望としてきた受験生にとって一般選抜はさらに厳しくなります。

渡辺氏今年の進研模試高3・7月総合学力記述模試データを見ると、早慶上智はいずれも理工系で志望者が前年を下回っています。早稲田大先進理工が前年比85%、上智大理工が91%、慶應義塾大理工が96%です。理工系全体の志望動向が落ち込んでいる形です(図1参照)。

石原氏全体としては、早稲田大は、東大や一橋大、東京科学大などを第一志望とする層の併願先として存在感を強めると見ています。こうした状況は、特に上智大にとって、逆にチャンスだと思います。

どういうことでしょうか。

石原氏早慶は学部ごとの対策負担が大きい。その点、上智大は英語力を軸に受験設計を組みやすい。

さらに2028年度入試から、TEAPスコア利用方式で英検1級・準1級のCSEスコアを代替利用できる予定です。英検を軸に準備してきた地方の受験生にも、上智大が選択肢として入りやすくなるでしょう。

注目されるのが東大のCollege of Design(以下、CoD)です。早慶上智の理系・国際系志望者にも影響するのでしょうか。

渡辺氏現時点では、東大の一般選抜とCoDは併願できません。従来の東大の一般選抜を目指してきた層が、そのままCoDに流れるとは考えにくいでしょう。むしろ慶應SFCなどを考えている生徒が、「東大にもこういう選択肢があるなら挑戦してみよう」と考えるケースはあり得ると思います。大学側も、従来の一般選抜では取り込めなかった層を意識しているのではないでしょうか。

木戸氏高校現場では戸惑いがあります。特に公立高校では「CoDを目指す生徒をどう指導すればいいのか分からない」という声があります。一般選抜と併願できないことも大きなハードルです。そこまでCoDに特化した対策をするなら、従来通り一般選抜で東大を目指す、という判断も出てくるでしょう。

では、CoDと早慶上智は直接競合するのでしょうか。

木戸氏目指している層も目的も、そもそも違うと思います。CoDは共通テストで6教科8科目が必要な上、一般選抜との併願もできません。対策の負担を考えると、早稲田大や上智大を目指してきた層がそのままCoDに流れてくるとは考えにくい。

積み重ねてきた勉強も、目指す目的も異なる生徒たちなので、単純に同じ受験生を取り合う構図にはならないと思います。

石原氏私はむしろ、CoDがもたらす「副作用」に注目しています。東大が9月入学や国際標準を意識した教育を本格化させれば、高校生や保護者が「それなら海外大学も選択肢ではないか」と考えるきっかけになる。

国内か海外かという二択ではなく、「国際的な環境で何を学べるか」という軸が強くなる可能性があります。

それは早慶上智には逆風では。

石原氏むしろチャンスです。上智大には国際教育の蓄積があり、早稲田大には国際教養学部、慶應義塾大にはSFCがあります。もともと国際志向の学生を受け入れる土台がある。その資産を磨けばいい。

木戸氏実際、私立大の国際系志願者はコロナ禍から回復し、24年の指数(100・1)に対し、26年は128・5まで上がっています。CoDだけでなく、国際系そのものへの関心が戻っていると見るべきでしょう。

理系は「規模」だけでなく、何を学べるか

理系では、早慶と上智の規模の違いも大きいですね。

木戸氏規模はかなり違います。早稲田大の基幹・創造・先進理工の入学定員は計1730人、慶應義塾大理工は932人、上智大理工は430人です(図2参照)。上智大は規模では早慶に及びませんが、少人数教育や女子学生比率、英語学位プログラムなど、別の強みを出せます。デジタルグリーンテクノロジー学科のように、DXとGXを掛け合わせた打ち出しもその一つです。

規模では早慶に及ばない上智大が、同じ土俵で勝負するのではなく、少人数、国際性、DX・GXという別の軸を打ち出してきた。特に上智大は学部だけでなく、大学全体が国際的な環境であることが強みです。これは上智理工にとって「逆転の一手」になり得るのでしょうか。

石原氏なり得ると思います。今の受験生は規模やブランドだけでなく、面倒見の良さや国際性で大学を選ぶようになっている。そこに賭けたのは理にかなっています。早慶が規模で埋めている理工系のすき間を突く動きとして評価できます。

「立地」重視の受験生と、10年後の大学序列

本誌独自調査で早慶上智志望者が大学選びで重視する要素を尋ねたところ、最上位は「立地」で、「大学の知名度・ブランド」を重視する割合はこの6年間で低下していました。

渡辺氏この変化を考える上で、保護者の存在は大きいと思います。今の受験生の親には就職氷河期を経験した世代が多い。大学名だけでなく、就職や通学のしやすさまで含めてかなり現実的に大学を見ています。オープンキャンパスも保護者同伴が非常に多いです。立地が重視される背景にも、その影響はあると思います。

石原氏かつてのように「早稲田大なら政治経済、慶應義塾大なら経済に入れば人生は順風満帆」という時代ではありません。今の受験生や保護者はコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスも意識する。大学の歴史や看板学部だけでなく、「無理なく受験できるか」「どこにあるか」「何を学べるか」「卒業後にどうつながるか」まで細かく比較しています。

それでは、10年後の36年には、早慶上智という序列や大学群はどうなっているでしょうか。

木戸氏「早慶上智」という呼び方自体は残ると思います。ただ、18歳人口の減少が進み、一般選抜の選抜性だけで大学を測ることは難しくなるでしょう。偏差値で一くくりにする大学群よりも、学問分野ごとに「この分野ならこの大学」という新しい大学群が生まれていく可能性があります。

渡辺氏私も基本的には同じ見方です。早慶が頭一つ抜けている構図、上智大が確固たるブランドを保っている構図は変わらないと思います。首都圏の中学・高校受験、大学受験情報を出されている各社の影響もあり、「早慶上理・MARCH・日東駒専」といった大きなくくり自体はそう大きく変わらないでしょう。

(2026年8月取材)

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